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「長野友美と黒七味」

 
 京の都に住む歌謡い長野友美嬢より2通の郵便が届いた。先週、ミディレコードより処女作となる作品集(1stフルアルバム)「何もない日々」が全国発売されたばかりの新進気鋭の歌謡いからの便りだ。
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 郷土、佐世保でのレコ初記念ライブとして、本年のライフdeライブに出演を依頼した。同封されていたのは四月二十六日の公演本番用セットリストやセッティング表などである。イラスト仕立てのセッティング表にも絵心豊かなあの方の愛嬌が浮かぶ。

 これら書類と別の封書には、竹筒入りの黒七味と言う代物と「桜のつぼみふくらむ頃」と一筆添えた便せんが収まっていた。元禄十六年(1703)創業という香煎、薬味の老舗「原了邸」製造されている祇園名物だ。

 歌世界と同じく、おこころざしも誠に雅である。京都伝統の薬味を送って下さるとは、ありがたや、ありがたや、でござる。

 早速、朝夕、味噌汁や漬け物、麺類などを食す際、筒を一降り。その名のごとく、黒褐色のしっとりした粒が出てくる。芥子だけでなく黒胡麻、白胡麻、山椒などで調合された深い香りと味わいはなるほど美味。「これは平凡な日々の食卓に豊かな風味を運ぶ魔法の筒じゃ」と笑みこぼるる逸品食生活を堪能し、京人気分を楽しませていただいておる次第だ。

「なまずの空」「九十九島」「何もない日々」……第一回作品集に収録された全九曲の楽曲。それは何もない日々の中に隠れた輝きを切り取って見せる絵描きの腕も思わせる。静寂という白地にアルペジオと声という筆を走らせて描いたような奥深い歌詞世界。それは人生に豊かな風味を添える黒七味にも似て実に小気味よい。

 歌で表現を行う楽師・長野友美、その正体は風流人ではなかろうか。(弥生)