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2007年04月12日

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「クロの女神」

 三人の共通点はとにかくペースが早い。二杯目からはほぼ手酌形式だ。飲兵衛仲間のイトさん、じゃんキエロ、拙者が久しぶりに宴を設けた。今回は前々から一度足を運びたいと目ぼしをつけていた昭和風情みなぎる評判の酒屋「大八」だ。

 
 午後8時の開宴時間に向け、胸を高鳴らせお仕事しておると、ズボンに忍ばす携帯電話が電文到着を知らせブルル、ブルル、ブルル、ブルル、ブルルと5回振動。じゃん氏からの電文を読み手を震わせ呆れた。「私とイトさんはヒマだったので七時から来てます。寒いので熱燗に移ります。早めに来て下さい」と記されている。

 
 ヒマだったので、熱燗に移ります、早めに来てください……何をたわけたことを電文しておるのか。この裏切り者め。よき中年おやじが女子高生みたいな軽い電文打つな! 一時間も差をつけられて飲むほど悔しいことはないのは、お主たちなら重々承知しておるはずじゃ。
  
 
 それになにより今宵の主菜である“クロの造り”はどうなっているのだ。本日一日中、クロ鯛の造りのことばかりを妄想し、ニヤニヤ労働していた拙者の頭はまさに黒一色。それが一瞬にして真っ白じゃ。拙者の幸せな時間を返せ。行列のできる法律事務所に訴えてやる〜。
  
 
 たっぷり山盛りされた大根のツマと大葉のケン。その上で頭と骨だけになった無惨な盛り皿を想像し、即労働中止。拙者は電文を返信する間も惜しみ、慌てふためいて建物を飛び出し、タクシーで酒屋に駆けつけた。


「は〜い!お疲れさま」と座敷きから猪口を片手にニヤニヤしながら手招きするイトさん。靴を脱ぐなり「この裏切り者め等が〜」と詰め寄ると、頬を赤らめたじやん氏が「僕ら何も裏切ってませんよ〜。まだ二品しか注文してませんよ。あ、これとこれはつき出しですからね〜」、おい、先酔いどもよ、何を小さな言い訳をへらへら並べておる。クロは?クロは?クロは?どこへ隠したあ〜。


「いらしゃいませ」おしぼりを持って看板娘さん登場。「…あ、どうも」「お飲み物何にしましょうか?」「…あ、生を」「はい。クロは今造ってますからね!」と明るく立ち去る娘さん。クロは今造ってますからね!…彼女の台詞を胸の中でゆっくり反芻してみた。

 DSCF1293.JPG女神だ。なんという奇跡。クロの女神が現れたのだ。彼女は確かに告げた。クロを今造っていることを。ありがたき幸せ。この無礼な先酔いどもの胃袋の中にはまだ一片のクロも入っていなかったのである。

 
 50分の遅れを取り戻すように自然と麦酒のペースが上がる。おやおや? これは? ありがたき女神のお言葉を授かった拙者は、ようやく平常心を取り戻し、店内の風情に意識が向いてきた。正面に渋いぜ〜。高倉健のラガー麦酒ポスターだ〜。座敷き、靴脱ぎ場にぽつんと置かれたストーブ。その上に金色の鍋。フタの部七ヶ所穴がほげておる。はて? これは? おでん鍋か?

 
 イトさんが「それ、燗つけ器さ。よかやろ、シブかろ」ほほーう、一度に七つのお銚子をつけることができる鍋。これはレトロ。なるほど。思わず熱燗を飲みたくなる訳ですな〜。鍋を電子写真機でパチリ、パチリしておると、女将さんが「あ〜ら恥ずかしか、汚れとるとに」とまるで自分の顔を撮影されているかのように照れながら登場。まもなくやって来ました。憧れのクロちゃんと遂にご対面でござる。

 
 じゃじゃ〜ん。と卓の上に立派なお造りが据えられた。拙者、じゃん氏、イトさん同時に「お〜お〜っ」DSCF1288.JPGと感嘆。「旨そう〜」再び電子写真機でパチリ。写真機の閃光を浴びるクロ鯛。その美しき姿は報道陣に囲まれた歌姫ビョンセや赤靴下の松坂投手にも引けをとらないオーラーを放っていた。

 
 ラガー麦酒から剣菱と六十余酒の二名酒を同時に燗付け。待望のクロをいざ頂きまする。お〜う。皮のこりこり食感と身の絶妙なる味わいに恍惚の舌鼓。ワサビに加え、女将さんが出してくれた自家製、柚子コショウも使って美味をたっぷり堪能。噂通り旨い肴を楽しませてくれる酒屋でござった。


 花見よろしく、黒見なる幸せな春の夜。めでたし。めでたし。(如月)

2007年04月02日

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「ライトinガァネット」

DSCF1233.JPG マクドナルドを通り過ぎると、背の高い女性が拙者に気づきニヤニヤ笑って出迎えた。「こんばんは、えらい今日はかわいいですね。パーカーなんか着ちゃって!どうしたんですか?」と、うた歌いのMayumi嬢がオフの拙者の姿をからかった。

 Mayumi嬢や音響技士のユリさんなどと喫煙コーナーでしばらく談笑しながら煙を吹かし店へ入った。

 地下につながる12階段を降りる。人、人、人。ステージ前に設けられた約70席は満席だ。カウンターの中でママが一人でドリンクオーダーに追われている。

 アーケード脇にポツンと佇むパーラー風の喫茶店「ガァネット」。地下に広がる店内は昼と夜でその表情を変える。今宵はライブが開かれる日だ。3月21日にフルアルバム『光りのピース』をリリースした松千が同店を拠点に開催しているイベント「ライブスイッチ」が10回目を迎えた。DSCF1165.JPG DSCF1179.JPG

 彼らにとって10回目の節目であり、レコ初全国ツアー「ピース・オブ・ライト」の初日であり、佐世保で初めてとなるワンマンライブという、おめでた3連発の記念すべき夜だ。

 本日はチケット完売。満席ということで拙者の席はカウンターの中に決定。忙しく働くママの邪魔にならないように、業務用冷蔵庫の上に腰を下ろして大人しくステージを見つめた。なかなかよきアングルじゃ〜。缶ビールのプルリングを抜きながら、臨時VIP席で久しぶりに松千のライブを堪能できる喜びを噛み締めた。

 大きな拍手でマツケンとちぐりんが、鮨詰め状態の花道に登場。熱い手拍子を受けながら、アップテンポ曲「ショー」でライブがスタートした。

 およよ〜。マユケンがエレキギターを弾いているではありませぬか。繊細でブルージーなアコもいいけど、エレキの音色もかっこいい〜ぞ!マツケン! てな具合でアルバム収録曲を中心に会場一体化となった松千ワールドが次々に展開。

 メジャーデビュー後、全国各地にライブ活動を広げた二人。さらに楽曲とステージングの幅が広がり、以前よりひと回り大きくなっているのを感じた。きっといろんなライブ会場で経験を積んだ結果だろう。二人のハートがますます豊かになったことを実感させる見ごたえのあるステージだ。

 中盤にはゲストMayumi嬢を迎えセッション。終盤にはなんと地元小学生ベーシストと「ハローフレンド」をセッションというサプライズのおまけつき。現在全国ネットで流れている東芝テックのCMソング「ライト」では、観客が皆で揃って蛍光スティックをふりかざすという幻想的な一幕も。DSCF1191.JPG
 
 あ〜なんとアットホームなライブだ。マツケンとちぐりんの人柄と唄心は確実に人々の心に届いているぞ。ママ「もう一本ビールちょうだい」と拙者もいい気持ち。いい心持ち。ついでに顔も赤らめ、いい面持ち。

 二人がライブを始めたホームグラウンド「ガァネット」。ここを満員にする。それはメジャー、インディーズに関係なく、佐世保のミュージシャンの一つの目標だ。とても小さなステージだが、500人、1000人規模のホールを埋めたのと変わらぬ達成感と緊張感が味わえる特別な場所だからだ。

 この夜、松千がお客さんと一緒に放った「光のピース」は、ここガァネットを皮切りに全国の人々の心を照らす旅に出る。松千!いってらっしゃい。ママ!ビールもう一本、ちょうだいなあ〜。  (卯月)