らいふのまきたろう雑文ノート
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14
2014-07-12T02:29:58Z
ライフさせぼ紙面に「ガッペイジャー」などを連載していた、らいふの まきたろうが、佐世保的な出来事を綴る「佐世保な記憶」をはじめ、10のカテゴリー別ノートにマイペースで更新中だぜ。
(function(d, s, id) {
var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0];
if (d.getElementById(id)) return;
js = d.createElement(s); js.id = id;
js.src = "//connect.facebook.net/ja_JP/all.js#xfbml=1";
fjs.parentNode.insertBefore(js, fjs);
}(document, 'script', 'facebook-jssdk'));
Movable Type 3.31-ja
赤ちゃん日記(17)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8142
2014-07-12T02:18:54Z
2014-07-12T02:29:58Z
【ファンタスティック・ハイハイ】 カーペットの上で腹ばいになった菜々子が両手をつ...
まきたろう
ファンタスティック・ハイハイ】
カーペットの上で腹ばいになった菜々子が両手をつき、ゆっくりと顔を持ち上げた。
「ほらお父さん見て見て、ななちゃんがほら」
玲子が興奮した声で修次を呼んだ。
「おっ!ななちゃん!」と修次が傍らに駆け寄る。
「ここからが問題さね」
玲子が菜々子に顔を近づけ真剣なまなざしで見守る。
これがハイハイの始まりだ。
「よ〜し頑張れ〜」
エールをおくる両親に向かい菜々子が「パブウ〜」といくらチャンみたいな声を愛らしく頬笑んでいる。
「見て見てかわいかよね」
菜々子のしぐさに玲子が修次の肩をたたきながら声をはずませる。
……うむ。確かに可愛い可愛くてたまらない。つらいことも一瞬に忘れてしまう至福の瞬間だ。
できればいつも今のような可愛い菜々子でいて欲しい。どうしてぐずったり、夜泣きで困らせたりするのだろう?
いや、自分だってきっと同じように父母をあれこれと悩ませ育ったはずだ。と頭では分かっているのに、泣きやまないわが子にげんなりしてしまう現実がある。
そういうとき、二十四時間子どもと一緒に過ごす母親たちが時に育児ノイローゼーに陥る心境も少しわかる気がする。
♪人生楽あらりゃ 苦もあるさ〜の歌の通り、子育ても山あり谷ありなのだ。
だが、われわれ男衆はこと育児に関して「苦」を避けている傾向も強いのではないだろうか……。可愛いシーンに触れるのもよいが、母親の目に見えない苦労も想像し、理解するという精神的サポートが案外大事なのかもしれない。
「お父さん! なんばボサーってしとると」
「あ、ごめんごめん。そうだっ。ビデオば撮ろうか!」
「そうね。最近撮しとらんもんね」
液晶画面の中に腹ばいになで手足をばたばたさせる菜々子の姿が浮かび上がった。バタフライのような動作がこれまた愛らしい。
「あらら、ななちゃん、反対よ。前に進まんば」
玲子の指令を振り切り、菜々子が突然お尻を振りながらバックを始めた。
まだうまく前進できないが、こんなに小さくても自力でわが身を移動できるようになったのだ……。
赤ちゃんってほんとうにすばらしい。
]]>
39
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8125
2014-07-10T09:36:46Z
2014-07-10T09:40:51Z
I LOVE YOU...
まきたろう
I LOVE YOU]]>
38
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8109
2014-07-01T03:21:38Z
2014-07-01T03:27:37Z
真夏のDJ...
まきたろう
真夏のDJ]]>
パパの赤ちゃん日記(16)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8091
2014-06-25T08:54:32Z
2014-06-25T09:02:55Z
【真夜中のドライブ】 オムツも替えた。寝巻きも変えた。ミルクも飲ませた。が、眠...
まきたろう
真夜中のドライブ】
オムツも替えた。寝巻きも変えた。ミルクも飲ませた。が、眠ったと思うとすぐ火がついたように泣く。
午前二時十八分。修次と玲子は重たい瞼をこじあけながら、部屋中に轟く泣き声を聞きながら途方にくれていた。
「やっぱい、どこか具合のわるかっちゃろか?」
玲子が『赤ちゃん育て方百科』のページをめくりながら心配そうに呟く。
大人なら「頭いたい」「熱ある」「尻がかゆい」とか言葉で意思表示できるが、赤ちゃんの伝達手段は、泣く、もしくは笑うという動作が主だ。
いくら血がつながった親とはいえ、一体どこがどんなで、何がどうなのか、なかなか判断がつかない。
止まぬ泣き声という不安をかかえ夜は更けていく。
「よし! わかった!」
修次は金田一耕助シリーズの等々力警部のジェスチャー付で平手を打った。
玲子はこの状況下でギャグをかます夫に一瞬あきれ、うつろな声で、
「なんがわかったと?」
「ドライブだよ! ドライブ! 会社の吉田センパイがいつか言いよらしたとさ。赤ちゃんは車の振動に安らぎを感じるって」
「ほんとね〜?」
国道から、みなとインターへ入り、大塔インターで下り、再び真夜中の国道を走っていると、菜々子が静かに眠りについた。
「さすが子どもさんを二人も育てとらす吉田さんね」と玲子が先輩のことを褒め称える。
黄色信号が点滅する交差点で朝刊を積んだバイクとすれ違う。
「うわぁ、もうこがん時間?」
自宅に戻り、布団に菜々子を寝かせ、修次と玲子は「ふ〜っ」と長いため息をもらしながら床に就いた。
それからどれほど時間が経ったのだろう。二人は再び菜々子の泣き声で目を覚ました。
カーテンが明るみをおび、もう朝が始まろうとしていた。(つづく)
]]>
パパの赤ちゃん日記(15)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8090
2014-06-23T09:52:47Z
2014-06-23T10:04:22Z
【夢をつんざく泣き声】 「今日はカボチャばたくさん食べたとよ」 顔にパックを貼っ...
まきたろう
夢をつんざく泣き声】
「今日はカボチャばたくさん食べたとよ」
顔にパックを貼った玲子が声を弾ませる。
生後8ヶ月を過ぎ、菜々子の食事も離乳食が増えてきた。
お座りが上手になった、お母さんといっしょを見て笑った……菜々子の一日の様子を聞くのも修次の日課だ。
カボチャの煮付けを肴に発泡酒を飲みながら、ニュースステーションを見て、玲子の話に耳を傾け、ときおり笑ったり、相づちを打つ。
主役の菜々子は今宵はもう夢の中だ。今日も健やかに育ったわが子に乾杯!!
犬がはっはっはっと喉を鳴らして修次の背後から近づいてくる。あっち行けよ、息をひそませ無視する。しかし、うう〜んという唸り声と同時に犬との距離はさらに縮まる。
恐怖に修次の背筋が粟立つた。
がうんがうんと牙をむく犬の咆哮。うわぁ〜たすけて〜襲われるぅ。うんぎゃあ、うんぎゃあ〜。……あれ? 犬じゃないの? 赤ちゃんの泣き声? 犬はどこ行った?
おっ、ここはわが家の寝室じゃないか。夢か……。実に恐ろしい夢だった。それにしてもうるさい泣き声。脳の芯までキンキンと響く超音波のようだ。
こんな夜中に泣きじゃくるのは一体どこの子じゃい!! おれは明日もお仕事だ。豆球の明かりがかすかに灯る部屋に目をこらすと、薄闇の中に前髪をたらして佇む女性の輪郭が浮かび上がる。
お〜っ! 出たぁ〜。妖怪!おっ!! 貞子……いや玲子じゃないか。
うんぎゃ〜うんぎゃ〜。
ななちゃんどうしたの? お母さんに抱っこされてそんなに泣いて。
修次は布団からはね起き、照明器具の紐を引いた。突然眩しくなった寝室に修次と玲子は目を瞬かせた。
「眠らっさんちゃん……」
「熱は? どこか具合のわるかっちゃなかと?」
「分からん……」
寝ぼけまなこの玲子が困惑しながらあやしている。
もしかして、もしかしてコレがかの有名な夜泣きなのでは。(つづく)
]]>
37
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8089
2014-06-20T08:44:39Z
2014-06-20T08:46:29Z
剣 菱 ...
まきたろう
剣 菱
]]>
パパの赤ちゃん日記(14)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8073
2014-06-16T11:17:42Z
2014-06-16T11:24:50Z
【ぽんぽんもしもし】 白衣の上にカーデガンを着こんだ看護師さんが現れた。 「夜遅...
まきたろう
ぽんぽんもしもし】
白衣の上にカーデガンを着こんだ看護師さんが現れた。
「夜遅くすみません」と修次と玲子は頭を下げた。
「こちらへどうぞ」
看護師さんの案内で、しーんと静まりかえった待合室から診察室に通された。
体温を測り終え、しばらくするとかっぷくのよい先生が白衣を羽織りながら診察室に入ってきた。
「どうもすみません」
夫婦揃ってまた頭を下げる。
顎にたくわえた髭と眼鏡の印象が歌手の上條恒彦を思わせる先生だ。
「はい、ここに座って」
先生が補聴器を取り出しながら、丸椅子を差し出す。玲子が菜々子を抱いて座り、修次は二人の背後に佇んだ。
玲子が菜々子のシャツをめくる。嫌そうにむずかる菜々子の側に看護師さんが寄り添うようにして体を支えながら、「は〜い、ぽんぽんもしもししましょうね」と優しく声をかけてくれる。
「ぽんぽんもしもし」という言葉に修次の緊張もややほぐれた。
内診を終わった先生が説明を始めた。
「突発性発疹症ですね」
「トッパツセイ……?」
修次と玲子はほとんど同時に聞き慣れない病名を声にした。
不安がよぎる。
「いやいや、そう心配しないで。これくらいの時期に多い病気なんですよ」
九度近い熱が二、三日続き、熱がひく頃に赤い湿疹がでることがある赤ちゃん特有の病気らしい。
生まれて半年くらい経つと、母親からもらった免疫がなくなってきて、発熱や感染症をおこしやすくなるそうだ。
しかし、大人のように注射や座薬で強制的に熱を冷ますのは、あまり好ましくないらしい。
熱が出るのは身体がウイルスと一所懸命に戦っている証拠。抗生物質などを使って自然に治すのが理想的なのだ。
しかし、大人も九度近い高熱は大変に辛いもの。こんな小さな身体で大丈夫なのだろうか……やはり心配だ。
「風邪も流行っていますから油断は禁物です。薬を飲んで、安静にして、水分は十分に与えてやってください。ご主人、ご心配なく」
顎髭をなでながら頬笑む先生に、修次は背筋を張り、凜とした声で、
「どうもありがとうございました」と挨拶して、深々と頭を下げた。(つづく)
]]>
パパの赤ちゃん日記(13)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8072
2014-06-14T02:43:11Z
2014-06-14T02:50:55Z
【真冬の夜熱とマフラー】 ピッピピ。菜々子の脇に挟んだ体温計が電子音を発し、測定...
まきたろう
真冬の夜熱とマフラー】
ピッピピ。菜々子の脇に挟んだ体温計が電子音を発し、測定終了を告げた。
「わっ!! 38度7分!」
玲子の顔がこわばり、修次に救いを求めるような視線を向けた。
「そ、そがんあると?」
「ねぇ、どがんしゅう?」
玲子にしては、珍しく語調が心細げだ。
「ミルクは飲んだ?」
「うん。食欲はまあまあ」
「なんか……顔とお腹に赤い湿疹の出とるっちゃん」
具合が悪いのだろう、菜々子は玲子にしっかり抱きつき、激しくぐずっている。
「もう9時半やろ、病院診てやらすやろうか……?」
修次は電話帳を開き、かかりつけの内科を探す。
娘の症状を大まかに伝えると、新生児だから小児科の専門医に診てもらった方がよいだろうと、アドバイスをもらい電話を切った。
ところが菜々子はまだ一度も小児科に通院したことがなかった。それに自宅近辺にも小児科医院はなかった。再び電話帳を開き、自宅からできるだけ近い医院を探した。
一軒目は院長不在という返事が返ってきた。
二件目は「これから連れてきなさい」という心強い応えが返ってきた。
修次が菜々子を抱っこして、三人で駐車場へ向かった。
修次は真冬の寒気に震えながら、菜々子をダウンジャケットの懐に包み込むようにして歩いた。
「ななちゃん、もうちょっと、しんぼうしようね」
玲子が白い息を吐きながら、修次の肩から菜々子の首元にマフラーをかける。
それは独身時代に玲子が誕生日プレゼントとして編んでくれた懐かしいマフラーだった。
修次は菜々子の体温とマフラーのぬくもりを感じながら、玲子に向かって「大丈夫さ」と声をかけた。(つづく)
]]>
パパの赤ちゃん日記(12)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8070
2014-06-13T08:22:39Z
2014-06-13T08:37:11Z
【お父さんの初節句】 ベビーカーにぬいぐるみ、洋服にオムツ……菜々子が生まれて、...
まきたろう
お父さんの初節句】
ベビーカーにぬいぐるみ、洋服にオムツ……菜々子が生まれて、修次と玲子は互いの両親にいろんなものを買ってもらった。
孫はわが子以上にかわいいと聞くが、なるほど菜々子と接するときの祖父母たちの屈託のない笑顔は優しさに満ちている。
孫の誕生で、夫婦二人のときよりも両親たちとのコミュニケーションもより円滑に運ぶようになった。子どもの成長は家族間共通の楽しみになっていくものだ。
そんな浦福家にもうすぐビッグイベントがやってくる。初のひな祭りだ。
今度も両親に両親に高額なひな飾りの寄贈を受けることになり、恐縮してしまう。
男兄弟で育った修次には未知なる桃の節句。確かにひな人形は美しいが、その価値観は分からない。
生活はこれだけ欧米化しているのだから、GIジョーとバービー人形を飾ってもおかしくなさそうだが、決してそうはならない。
子どもに関する行事も結婚式と同じで、伝統や観衆を重んじ「普通に」という日本人らしい尺度でいろんな事柄が継承されている。
住宅事情もあり、立派な段飾りは置くことができない、どんな人形がいいのか専門店へ足を運んだ。
修次は段数やサイズで値段が上下するとばかり思っていたが、質やブランドで金額が変わることを知った。
その種類も実に豊富で目が眩むほど。修次は個人的にシンプルながらも味わい深い木目込み人形が気に入った。
しかし、家族の間では、やはり小さいうちはきらびやかなお姫様が喜ぶだろうという一般論に落ち着いた。
「あとはお顔で選んでください」というスタッフのアドバイスを受け、家族総出で売り場を行ったり来たりした。
顔ね。了解フェイスね! 顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔。
お姫様とお内裏様の顔ばかり凝視していた修次は玲子へ向かって、
「ねぇ、ひな人形ってなんか顔色の悪うなか?」
「なんば言いよると、白粉よ。ファンデーションばしとらすとたい。う〜ん美人は値段も高っかね。お父さんもちゃんと選ばんばよ!」
!? 玲子が初めて修次のことを「お父さん」と呼んだ。
「……ハイ!おかあさん」と修次も玲子に返した。 (つづく)
]]>
36
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8054
2014-06-06T09:51:15Z
2014-06-06T09:53:13Z
卵を見て時夜を求む ...
まきたろう
卵を見て時夜を求む
]]>
パパの赤ちゃん日記(11)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8053
2014-06-05T09:15:56Z
2014-06-06T01:15:27Z
【ミッション:お留守番〜後編】 いろんな方法であやしてみたが、菜々子の機嫌はなお...
まきたろう
ミッション:お留守番〜後編】
いろんな方法であやしてみたが、菜々子の機嫌はなおらない。
試しに最近購入した『おじゃる丸』のCDをかけてみた。
まったり まったりな〜
いそがず あわてず まいろうか〜♪
菜々子の体を揺すりながら、曲に合わせてハモってみる。が、変化なし。今の菜々子には子守歌には聞こえないようだ。
ほのぼのしたサブちゃんの歌声をバックに修次は、菜々子と二人で過ごす夜が心細くなってきた。
よし。きっと腹が減っているんだ。少し早いがミルクを飲ませてみよう。
修次はほ乳びんに粉を入れ、180CCの目盛りまでお湯を注ぎシェイクした。続いて水道水をかけながら、容器を冷やすが、娘の激しい泣き声えに気をとられ、焦ってしまう。
玲子のマネをして、ミルクを自分の腕に一滴垂らして温度チェック。しかし、熱いのかぬるいのか? ちょうどいい塩梅が分からない。
さらに水を浴びせ冷却。今度は思い切って自分で試飲してみた。ありゃ、冷やしすぎ? ぬるいぞ。
修次は菜々子の頭をやや立てるように抱き代え、「は〜い、ごめんごめん、お待たせしまいちゃぁ。は〜い、ミルクでちゅよぉ」と幼児言葉を発しながら、びんの乳首を菜々子の口もとに運んだ。
菜々子はすぐさま乳首に吸いつき、必死で吸引し始めた。……やっぱり腹が減っていたんだ。修次は半時間ぶりの平静に安堵した。が、それもつかの間、菜々子が乳首を外してまた泣き声を上げた。
「お〜い、どうちたの?」
と再び乳首を近づけると、一度は吸いつくのだが、すぐに拒否したように泣きじゃくる。
同じ動作を数回繰り返すうちに、修次も泣きたい気持ちになってきた。
とほほ。慣れぬ授乳に困惑してしまったその瞬間、玲子のレクチャーが頭をよぎった。
「出のわるかっったら、キャップをゆるめて調整してね」
……そうだった!
修次に届いた玲子の声。それは『スパイ大作戦』の指令ではなく、映画『スターウォーズ』のオビワンからのお告げにも似ていた。
「フォースを使え」という声に導かれ、デススターを攻撃するルークの勇姿のフラッシュバックと同時に、
修次は素速くゴムでできた乳首キャップを回した。
あちゃぁ〜。ガチガチに締め付けとるもん!? ななちゃん、さぞ飲みづらかっただろうな。
さぁさぁ気をとりなおしてもう一杯。
菜々子がもぐもぐと乳首を頬張る。びんの中のミルクがどくんどくんとリズムを刻み、スムーズに流れていく。修次の顔にも笑顔が戻った。
修次の頭の中にスターウォーズのエンディングテーマ曲が流れる。
ミルクがすっかり冷めてしまったことなど忘れてしまって、満足げに授乳を続ける父。
冷めたミルクが旨いか?まずいか? まだ喋れない娘。
味ではなく、ここで飲みはぐれたら大変だと本能的に察したのか?
菜々子はすごい勢いで最後の一滴まできれいに「父と留守番乳」を飲み干した。
]]>
パパの赤ちゃん日記(10)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8036
2014-06-04T09:31:04Z
2014-06-04T09:35:26Z
【ミッション:お留守番】 よし、もうちょっとだ。がんばれ〜なな〜。修次はホットカ...
まきたろう
ミッション:お留守番】
よし、もうちょっとだ。がんばれ〜なな〜。修次はホットカーペットの上にひざまずいた。
仰向けから自力で横向きになり、脚をぴくりぴくりと蹴り上げる菜々子のかわいいお尻を軽く押してやる。
「ヨイショ」
くの字に曲げた肘を頬の下に敷くようなポーズで、菜々子がうつぶせになった。
「やった。できた!」
修次はもう少しで、寝返りをマスターできそうな菜々子の成長を喜んだ。
「すごいぞ、ななちゃん」
菜々子を抱き上げ、頬ずりをする。まさしく親バカ。わが子が世界で一番かわいいのである。
修次はそのまま、菜々子を頭上に持ち上げ、「高い!高い!」を大サービス。親心が伝わったか? 菜々子も笑みを浮かべ、フンガ〜、フガフガと声を出して笑っている。
「高い、高い〜」
感きわまったか、フンガ〜、フガフガと喜ぶ娘の口から透明の液体が、たら〜り、たらたらと落下。「たかっ…」と大きく口を開いたまま修次の声が止まり、お見事! 娘の糸引きヨダレが、したたり落ちた。
ウンガムガムガ、ゲッ。修次の喉は訳の分からぬ音を発し、愛する娘のヨダレを受け入れた。
「ななちゃん……」
お〜う、なんという優しさ、寛大さ、包容力。怒りどころか、不潔さも感じない。「口に入れてもまずくないわが子のヨダレ」ということわざがあってもおかしくない。これが「悟りの境地」というものだろうか。
いやいやいや。違う。現実はそんなに甘くない。菜々子のごきげんは、そうそう長く続かないのだ。ウルトラマンのカラータイマー10回分程度が限界かなぁ。
今日は玲子が高校の同窓会に出かけ、菜々子と二人っきりの初お留守番。案の定、父と娘のハッピーなひとときの終わりを告げるかのように、菜々子がぐずり始めた。
テーブルには玲子が準備していった、ほ乳びんと『ルンルンベビー』の缶が置いてある。「8時頃に一回飲ませてね。ひどうぐずったら、少し早めでもよかけんね」と玲子の声が、テープレコーダーから聞こえてくるテレビドラマ『スパイ大作戦』の指令のように脳裏に響いた。
修次はミッキーマウス絵柄の掛け時計に目を移す。
……おいおい、まだ6時35分じゃないか。
渋っ面の修次の腕の中で、菜々子が体を激しく動かし、泣き声を上げた。
修次ピンチ!
「ミルクを飲ませても状況が変わらない場合、当局はいっさい関知しない。成功を祈る」と、また『スパイ大作戦』風の幻聴。
え〜っ!? まじぃ?
「なお、このテープは自動的に消滅する」……
お〜い、勝手に消滅しないで……。 (後編へつづく)
]]>
35
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8035
2014-06-03T06:13:14Z
2014-06-03T06:15:00Z
泉福寺洞窟 ...
まきたろう
泉福寺洞窟
]]>
パパの赤ちゃん日記(9)
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8034
2014-06-02T09:12:14Z
2014-06-02T09:20:15Z
【ルンルンベビー】 おっと、すでにレジは長蛇の列だ。片腕にわが子を抱え、もう一方...
まきたろう
え〜と、フリフリ、モリモリ……あれ、ミルクの名前は何だっけ? あ、あった。これこれ『ルンルンベビー』だったな。
修次は玲子に頼まれたミルクの名前を確認する。何でも通常価格より七、八百円安いらしく、仕事の合間をぬって一役買うことになったのだ。
修次はルンルンベビー を二缶取ってレジへ並んだ。
それにしても平日なのに修次同様、ネクタイ姿の父親も多い。渋い面構えの中に「嫁さんに頼まれて仕方なく並んでいるんだぜ」とでも言いたそうな哀愁も帯びている。修次もそんな父親たちに同化して順番を待った。
ベビー用品はビールや煙草など修次の嗜好品と同じく、家計でのウェートが高くなってきた。でもビールも煙草もやめたくない。
同じ商品を少しでも安く手に入れるのは庶民の知恵であり、家庭の幸せを守る鍵だ。家族のために堂々と胸を張ってレジに並ぶぞ。と修次は自分に言い聞かせていた。(つづく)
]]>
「バック・トゥ・ザ・早岐」
tag:www.lifesasebo.com,2014:/makitaro//14.8033
2014-05-29T08:20:31Z
2014-05-29T08:53:17Z
昨日、くまモン来場で盛り上がった早岐茶市「後市」に行った。会場近くの「洋食の店...
まきたろう
昨日、くまモン来場で盛り上がった早岐茶市「後市」に行った。会場近くの「洋食の店グリーン」という立て看板が目を引いたので昼ご飯を食べることにした。
カウンター席だけの小さな空間だが、厨房や備品など年季の入った佇まいが郷愁を誘う。
ランチを頼み、ご主人とおかみさんと談笑。なんと創業40年、ずっと中町(早岐2丁目)で飲食店を営んできたそうだ。
そんな二人の記憶をひもとくと、伝統の茶市風情も近年になりずいぶん変化してきたことが分かった。
その昔周辺には旅館や木賃宿が点在。茶市に露天を並べる商人や生産者たちが宿をとり、毎夜どんちゃん騒ぎを行うほど景気がよかった時代があったそうだ。
コンビニやスーパーがない時代、人々は新茶や海産物、陶器、金物などさまざまな食材と生活用品を買い置き用としてまとめ買いするために、市に足を運んでいたようだ。
そんな茶市に出かけたお土産として人気を博したのが和菓子の「早岐けーらん」だった。
当時は商品の運搬も船が主流。期間中は、早岐瀬戸から観潮橋の先まで船舶が停泊。食堂のご夫婦も海の幸、山の幸が海路で早岐に集まってきていた時代をご存じだった。
その光景を収めたモノクロ写真が早岐商工会に保管されている。昭和30年代に撮影されたもので、40年代初頭頃まで船がところ狭しと並んでいたらしい。
鉄道に加え、定期連絡船が発着していた早岐は交通の要所として発展してきた。陸路と海路でいろんな物資と旅客が集うターミナルタウンだったのだ。
カウンターの端っこにちょこんと腰掛けた常連客らしきおばあさんの口から、早岐駅の前に映画館もありサーカスや見世物小屋もよく来ていた、という話も飛び出した。
交通の便により人、宿、店、娯楽が整っていった町。茶市は、活力に満ちた早岐を象徴する一大イベントだった。
「巨人軍は永久に不滅です」と長嶋茂雄が引退を決意した頃に、早岐に開業した小さな洋食店。ランチ皿に盛られたハンバーグ、魚フライ、ロースハムという豪華なラインナップに、人々のささやかな夢も一緒に乗っかっているような庶民の味がした。
ご主人、おかみさん、ごちそうさまでした。
のれんを押して店を出ると、初夏の陽射しが照りつけた。約20分の昼食だったが、タイムトラベルから戻ってきた時差ボケなのか? 早岐の町並みが眩しかった。
]]>