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パパの赤ちゃん日記(11)

ミッション:お留守番〜後編

いろんな方法であやしてみたが、菜々子の機嫌はなおらない。


試しに最近購入した『おじゃる丸』のCDをかけてみた。


まったり まったりな〜
いそがず あわてず まいろうか〜♪ 


菜々子の体を揺すりながら、曲に合わせてハモってみる。が、変化なし。今の菜々子には子守歌には聞こえないようだ。


ほのぼのしたサブちゃんの歌声をバックに修次は、菜々子と二人で過ごす夜が心細くなってきた。


よし。きっと腹が減っているんだ。少し早いがミルクを飲ませてみよう。

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修次はほ乳びんに粉を入れ、180CCの目盛りまでお湯を注ぎシェイクした。続いて水道水をかけながら、容器を冷やすが、娘の激しい泣き声えに気をとられ、焦ってしまう。


玲子のマネをして、ミルクを自分の腕に一滴垂らして温度チェック。しかし、熱いのかぬるいのか? ちょうどいい塩梅が分からない。


さらに水を浴びせ冷却。今度は思い切って自分で試飲してみた。ありゃ、冷やしすぎ? ぬるいぞ。


修次は菜々子の頭をやや立てるように抱き代え、「は〜い、ごめんごめん、お待たせしまいちゃぁ。は〜い、ミルクでちゅよぉ」と幼児言葉を発しながら、びんの乳首を菜々子の口もとに運んだ。


菜々子はすぐさま乳首に吸いつき、必死で吸引し始めた。……やっぱり腹が減っていたんだ。修次は半時間ぶりの平静に安堵した。が、それもつかの間、菜々子が乳首を外してまた泣き声を上げた。

「お〜い、どうちたの?」

と再び乳首を近づけると、一度は吸いつくのだが、すぐに拒否したように泣きじゃくる。


同じ動作を数回繰り返すうちに、修次も泣きたい気持ちになってきた。


とほほ。慣れぬ授乳に困惑してしまったその瞬間、玲子のレクチャーが頭をよぎった。

「出のわるかっったら、キャップをゆるめて調整してね」

……そうだった!

修次に届いた玲子の声。それは『スパイ大作戦』の指令ではなく、映画『スターウォーズ』のオビワンからのお告げにも似ていた。


「フォースを使え」という声に導かれ、デススターを攻撃するルークの勇姿のフラッシュバックと同時に、

修次は素速くゴムでできた乳首キャップを回した。


あちゃぁ〜。ガチガチに締め付けとるもん!? ななちゃん、さぞ飲みづらかっただろうな。


さぁさぁ気をとりなおしてもう一杯。


菜々子がもぐもぐと乳首を頬張る。びんの中のミルクがどくんどくんとリズムを刻み、スムーズに流れていく。修次の顔にも笑顔が戻った。


修次の頭の中にスターウォーズのエンディングテーマ曲が流れる。


ミルクがすっかり冷めてしまったことなど忘れてしまって、満足げに授乳を続ける父。


冷めたミルクが旨いか?まずいか? まだ喋れない娘。


味ではなく、ここで飲みはぐれたら大変だと本能的に察したのか?


菜々子はすごい勢いで最後の一滴まできれいに「父と留守番乳」を飲み干した。