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「稲佐山で魂を揉まれてアイタタタ」

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8月24日、日曜日。クーラーバッグに麦酒をいっぱいつめて稲佐山野外ステージへ向かった。同行者は昨年と同じハウリン伊達丸だ。

長崎駅からの道中、「チケット買います」「チケットあまっていませんか?」のプラカードをかざす若者たちの姿が目を引く。『スカイジャンボリー2008〜笑顔〜』のチケットは完売、当日券なしというすごい人気だ。

青空と緑が映え渡る自然空間を舞台に出演者とオーディエンスが一体となって創り上げてきた10年間におよぶ感動の蓄積。それは人々の心の中だけでなく、稲佐山中腹の芝生や木々、大空の中に夏の記憶として刻み込まれているような雰囲気を漂わせている。

FM長崎が九州を代表する夏フェスへと成長させたスカジャン。音楽を介し人と人の心をつなぐ装置として稲佐山というロケーションは不可欠なのかもしれない。

会場はすでに満杯だ。わたしと伊達丸はとりあえず喫煙エリアに荷物を置き、七星薄味特別仕様と駱駝煙草に火をつけ、麒麟淡麗で乾杯。キマグレンの演奏で2008年のスカジャンが爽やかに幕を開けた。

なんとか二人が座れる芝生空間に割り込む形で場所を取り、佐世保駅の朝市で買った平戸のスボを肴に、ほれまた一杯。その後、会場全体を散策。オリジナルグッズブースでFM長崎のDJマークとサンディトリップの歩美ちゃんを発見。わたしたちはまるで仲良し女子高生みたいにお揃いでスカジャンタオルを購入した。

そろそろ会場前方のライブエリアに向かいましょうか、とスタンディング空間へ足を運ぶ。ミドリの登場を待つ若者たちの熱気で早くもボルテージが上がっている。ミドリが現れるやいなや、人の固まりは激しいうねりとなり、わたしの体は前横後ろ、前横後ろ、と見知らぬ少年少女たちの熱の渦に巻き込まれていく。

あれれ〜靴が脱げた。背後にいる誰かにかかとを踏まれ、脱げた靴をはき直し、またはき直す。あ〜なんと久しぶりの乱痴気騒ぎ。ルースターズやモッズ、シナロケなどビートバンドを追い求め、サウンドに乗ってぴょこぴょことポコダンスしたいた若き日の記憶が全身に甦る。
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誰が投げたか? 空に弧を描きしぶきを上げるミネラルウォーター。その向こうにトンボが飛んでいる。視線をステージに戻すと人の頭。頭。頭。指を突き出した拳。腕。拳。腕。拳。腕。人垣からにょきっと植物の茎が生えてきたように青年の足が飛び出す。その先にセーラー服姿でマイクを握る後藤まりこの上半身が見え隠れする。倅みたいな年代の少年少女たちと一緒になって体をもみくちゃにしながら体感するパンクな連帯感。年甲斐もなくぴょんぴょんジャンプしながら右腕を振り上げてしまう。

映画『エイリアン3』のシガニー・ウィーバーみたいな短髪頭で目の周りに血行不良をおこしたような“目のクマ”メーク(?)の後藤まりこが歌い走る。お行儀の悪い“おきゃん”なライブパフォーマンスはさらに加速していく。これぞ目を点にさせる五感で感じるロックなる日本語表現。嘘つきバービーと仲が良いバンド…と聞いた風の噂が説得力を帯びてくる。オーディエンスの心身を解き放すように弾き出されるジャジィーなサウンド。後藤まりこはステージ袖のやぐらに這い上がり群衆を扇動しマイクを放り投げた。かなり古い例えで恐縮だが、初めて動く忌野清志郎や戸川純、遠藤ミチロウ、町田町蔵を見た時に似た衝撃を覚えた。
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常識や日常はもとよりロック的お約束からも一端抜け出した場所。世間から見るとそこは「負の力」の「たまり場」なのかもしれない。そこから新たな音と言葉を生み出すことこそロック的醍醐味だと思う。ミドリは「負の力」も「正の力」も壊した場所から音と言葉をはき出しているような実にオモロイ!バンドだった。


10Feetのサウンドによる観衆ウェーブやタオルプロペラ。リッキーG、モンキーマジックを迎えて心地よいサンセットタイム。陽気なビークルのロックを聴きながら麒麟淡麗また一本。焼きちゃんぽん食べながら麒麟淡麗また一本。思い思いのスタイルで音楽にふれることができる稲佐山。

日が沈み幻想的な照明が浮かび上がったステージにブンブンサテライツが現れた。わたしは再びスタンディングエリアに立っていた。MCなしノンストップで展開する無国籍でスタイリッシュなロックサウンドに酔いしれながら、またまた若者に全身をもまれながら右腕を振り上げていた。

さすがに翌朝、足腰、右腕を鈍い筋肉痛が襲った。「運動会に参加したわけではないのに…年だぜ」。自戒したものの、少年少女に魂を揉んでもらったおかげで心だけは妙に清清しかった。若者たちがが一つになって笑顔になれるお祭りは社会の豊かさ。時には大人目線を伏せて少年少女に魂を揉んでもらう覚悟も大切なのかもしれない。アイタタタ……。(葉月)