涼しい!夏は昔ながらに滝で避暑
小城は羊羹だけじゃなかった

  こんなに近いのに旅気分満点。高速に乗ると見過ごしてしまいそうな佐賀の手前の小城だが、羊羹以外にも面白い顔があった。
西日本随一の名瀑布といわれる清水の滝。幅13メートル、落差75メートルの豪快さだ。まさに深山幽谷、静かな霊場の雰囲気が漂っている。この滝に打たれて修行する武士が何人も凍死したという話もある。

涼しい!夏は昔ながらに滝で避暑

小城は羊羹だけじゃなかった


 高速を多久・小城インターで降りて、小城市へ。小城町、三日月町、牛津町、芦刈町の四つが合併して小城市となった。天山山系から有明海まで続いて、さまざまな表情を見せる。
 まずは牛津。ここはデパート玉屋の発祥の地だ。長崎街道の宿駅・牛津、その繁栄の痕跡は赤レンガの倉庫に辛うじて残っている。『牛津赤れんが館』は旧田中丸商店が明治時代の中期に建てたもの。
 芦刈は有明海に面した田園地帯。ここにはムツゴロウ・シオマネキ保護区があって、『干潟体験館』の施設も。潮が退いたとき干潟のあちこちに、愛嬌たっぷりのムツゴロウが元気に跳ね、片方の爪が大きいシオマネキも見ることが出来る。子どもの夏休み体験学習には最適かも。
 佐賀平野だから当然、弥生の遺跡があって、『史跡土生遺跡公園』は弥生時代の竪穴式住居が再現されている。青銅器が作られていた名残があるという。
 小城というと、誰もが一番先に連想するのは小城羊羹。中心部に入ると、いくつもの羊羹屋が軒を並べる。甘党には堪えられない。昔の羊羹は表面に砂糖が結晶して硬くなっていたなあ、と思い出が湧いてきた。
 羊羹資料館はレンガ造りの砂糖倉庫を改装したもの。昭和初期のたたずまいを残している。ここで切り羊羹と抹茶をいただき、羊羹の歴史を学ぶ。当然お土産は小城羊羹ということになる。
 天山山系に源を発する清水川が『清水の滝』となって落ちる名瀑布へと車を走らせた。山間に大きな料亭がいくつもある。鯉料理の専門店だ。
 清水山見瀧寺の山門をくぐって、涼しい参道を登る。本殿の横には、まさに京都の清水寺を模した、朱塗りの舞台が崖にせりだしてある。遠くに佐賀平野が望める景勝地だ。
 その裏手、急な階段を降りると、落差75メートルの『清水の滝』が。飛び散る水滴であたりはクールクール。まさにここは避暑地。いや、昔からの霊場で、折しも白衣一枚で滝に打たれる女性が二人おられた。
 佐賀鍋島藩は多久藩、蓮池藩、小城藩の支藩に分かれていた。城下町の名残がわずかに、小城公園一帯に残っている。二代藩主鍋島元茂は剣豪・柳生宗矩の子・十兵衛と親交深かったといい、その二人を祭る社があった。
 小城藩主の菩提寺である星厳寺。中国風の楼門が珍しい。ここには江戸中期の作とされる五百羅漢があるが、それより面白いのは、子どもたちが刻んだ石仏。夏草茂る中にポツンと、ユーモラスに鎮座していた。
 つい通過してしまう町にも、探せば何か見るものがある、と実感するドライブだった。


佐世保玉屋は牛津から始まったが、そのころのレンガ倉庫がいまも残っていた。
有明海に臨む芦刈町には、干潟体験館やムツゴロウ公園があって干潟を楽しめる。
干潟の保護区ではムツゴロウ、シオマネキの元気な姿を見ることが出来る。
史跡・土生遺跡公園には弥生時代の住居が再現されている。青銅器文化があったという。
道端の樹の根元に無数の小石が積まれていた。昔からの民間信仰の、イボの神様だ。
清水の滝へ登る参道に、鯉料理屋が何件もあって、過日の繁栄を思わせる。
小城羊羹は村岡屋が始まりのようだが、羊羹資料館で、なぜ小城に羊羹が生まれたかを知る。
小城藩主の菩提寺・星厳寺。五百羅漢が鎮座して静寂な夏がある。


掲載日:2008年08月29日