こんなに近いのに旅気分。福島から
伊万里、大川内皿山へとドライブ

 国見を越える有料道路も無料になって、伊万里に行くのが気軽になった。古い歴史文化を持つ伊万里は佐世保とは深い関係があるんだ。
伊万里焼は鍋島藩によって厳しく管理され、この青螺山を背景とした閉ざされた地で作られた。山に向かって続く坂道に沿って、焼物屋や窯元が並ぶ。いまも秘窯の里というイメージだ。

こんなに近いのに旅気分。福島から

伊万里、大川内皿山へとドライブ


 国見トンネルを抜けるとすぐ右側の車窓に西有田の谷が広がる。向こうには黒髪山、青螺山、腰岳の鮮やかな緑。西有田の棚田も綺麗だけれど、田植えが終わったばかりの田んぼが綺麗だから、ついでに夕陽で有名な福島の棚田を見に行こうか。
 伊万里湾にそって北上した。佐賀県を通って「つばきの島」として知られる長崎県松浦市福島町へ。遠いようだが車では一時間ほどしかかからない。
 いろは島を望む土谷免。土谷棚田は、海岸から山の中腹を走る自動車道まで階段状に続いている。日本中が圃場整備事業で小さな田圃を消しているなか、ここには昔ながらの風景が残されていた。夕暮れともなるとカメラマンが集まって、夕陽と水を張って光る水田風景にシャッターを切る。
 戻る途中で、「イマリンビーチ」という看板を見て道を折れた。環境省の「日本の水浴場88選」に認定された海水浴場だ。内海にあるために波もなく静かで、シャワーやロッカー、休憩所も。この夏お勧めのスポットだ。
 伊万里の町中に戻って昼ごはんを食べたあと散歩すると、「青緑」という雑貨屋さんを発見。まさに青緑色したお店。なにやらホッとする可愛い小物が。
 有田焼は伊万里焼とも呼ばれる。それはこの港から積み出していたため。だから明治時代まで、伊万里の港には焼物を商う商家が軒を並べていた。名残を求めて、白壁土蔵づくりの「陶器商家資料館」へ。隣には「海のシルククロード館」があって、古伊万里も展示されている。 
 街中の橋の欄干には伊万里焼が鎮座している。オブジェのようで面白い。よく悪戯して壊されないものだと感心することしきり。
 さて、伊万里の奥の院である大川内皿山に向かおう。鍋島藩の藩窯があったところで、昔は関所があって秘密を厳重に守っていた。ここで鍋島焼の優品が生まれた。いまは商家や窯元が並んでいる。坂道を登ると、涼しげな音色が聞こえてきた。6月は「風鈴まつり」が開催される。
 伊万里の中心から松浦方面に走ると、山代がある。そこの里小路は武家屋敷の名残があって、小笹の生垣が並んでいる。天正年間に柳川からきた田尻一族によるものという。笹垣がふんわりした緑色で美しい。
 「松浦一酒造」のカッパのミイラの話はよく聞くので訪ねてみた。なるほど、「河伯」と書かれた箱もあって、カッパらしい……。
 日帰りドライブは、青幡神社で終わり。樹齢千年という、大楠が枝ぶりもよく茂っている。初夏の風に緑の葉が揺れていた。


福島の土谷棚田。緩やかな傾斜で段々状になった田んぼが続いている。
イマリンビーチの砂浜。夏には大勢の海水浴客で賑わう。
可愛い小物を揃えた「青緑」。佐世保からのお客も多い。
伊万里津の名残を彷彿させる商家。いまは資料館として、古伊万里を展示。
鮮やかな絵付けの欄干の焼物。まさに焼物の町ならではの見事さだ。
焼物屋のガラス窓の陳列をのぞき込みながら、大川内皿山を散策。
里小路の小笹の生垣。武家屋敷の武骨さはなく落ち着いた風景だ。
青幡神社の大楠。松浦党二代源直が神社を建立、楠を植えたと言い伝えがある。


掲載日:2008年06月30日