大島大橋をわたって大島、崎戸島、
御床島に。水ぬるむ春の海だ

 いまは合併で西海市の一部となって、造船と石炭と漁業とさまざまな顔を持っていた三つの島だが、いまそこに溢れているのは自然ばかり。
全長260メートルのウォーターデッキステーション。杉の木で作られた散歩道が、海の上に突き出している。ただ、それだけのこと。

大島大橋をわたって大島、崎戸島、

御床島に。水ぬるむ春の海だ


 海の色を映したような大島大橋。かつてはフェリーで渡っていたのだが、念願の橋が架かって便利になった。だけどなんだか旅情が消えたようで、旅人として味気ない。わざわざ船で渡るという非日常があったのに。
 開通当時は700円だったが、いまは300円。渡るとすぐにオーベルジュ「あかだま」という看板が見える。そこでランチする予定で、まずは島の散策だ。渡る前から見えていたのが、「大島造船所」のクレーン群。いま造船の島として賑わっている。迎賓館も兼ねた「大島アイランドホテル」が入江の岬に佇んでいる。
 いまが旬なのは魚ではなく「大島トマト」。小ぶりだがしっかりした味が人気で、いまやブランド化している。ホテルの直営農場で「大島トマト狩り」が出来ますよ。
 大島の西の端の斜面に太田尾の集落があり、その高台には白い「太田尾カトリック教会」がある。昭和4年建立と比較的新しいけれど、いまも信仰が暮らしに生きているのを感じさせる。玄関に立つ石像二体が珍しい。
 崎戸島は江戸時代には捕鯨、明治から昭和までは炭坑の町として栄えてきた。コンクリート棟がその残骸をあちこちに残している。崎戸歴史民俗資料館ではジオラマで当時の繁栄がうかがえる。「地の群れ」などで小説家として知られる井上光晴氏は、この炭坑での経験が文学を生んだといえそうだ。
 どこの海も透明で驚くほど綺麗だけど、260mの長さで海に突き出している「ウォーターデッキ」は、まさに海の上の散歩道。ここから見る落日は最高だというけれど……。
 お腹がすいたので「あかだま」に戻る。林の中にあるオーベルジュ。こんな田舎にちゃんとしたフランス料理があるはずないと侮ることなかれ。
 海水浴が出来るアメリカ直輸入のトレーラーハウス10棟を並べた「さきとRV村」や、夏にはベッコウトンボが飛ぶ「とんぼ池」など自然がいっぱい。釣りだけでなく家族でスローライフが楽しめる島なのだ。
 崎戸島の先にあるのが御床島。この小さな島は漁業を中心としていて、古くから民宿やペンションがあった。丘の上には国民宿舎を改修した、崎戸観光グランドホテル「咲き都」がある。ロビーからは一面に広がる海が望める。ラドン温泉があったので入ってみた。実にのんびりとしていい湯だ。
 何日か滞在して読書などで過ごすのがよさそうだ。椿の林を岬の先端まで散歩してみた。すると丸い展望台があって、その先は五島灘が広がる。夕暮れにはドライブの恋人たちが海に沈む夕陽を見にくるだろう。


平成11年11月11日11時11分11秒に、大島大橋が開通した。いま通行料は300円。
大島アイランドホテルで旬の大島トマトが食べられる。大島トマトかき揚げ丼(1,050円)
太田尾カトリック教会は斜面の高台にある、白い天主堂だ。
オーベルジュ「あかだま」の庭先には、ミモザの花が咲いていた。
炭坑全盛だった頃の面影をあちこちに見ることが出来る崎戸、大島だ。
御床島の展望台から見えるのは青い海と夕陽と永遠だ。
歴史民俗資料館は観覧無料。一階に「井上光晴文学館」が併設されている。
「咲き都」のラドン温泉につかって、果てなく広がる海を眺めてみませんか。


掲載日:2008年04月11日