身納連山の裾にひろがる、うきは市
萱葺きと白壁、新鮮でクラシックな風景

 うきは市は、市というイメージはまるでない。中心部の吉井町でさえも白壁の蔵づくり。山に近い浮羽町はまるで落ち着いた村の佇まいをみせる。深まりゆく秋が奏でるクラシック音楽を聴くような……。
国の重要文化財に指定されている『くど造りの平川家住宅』は三百年の歳月を経たいまも現役。その堂々たるたたずまいは、この山里にこそ似合っている。葺き替えられたばかりだが、やがて馴染んだ風景になっていくだろう。

身納連山の裾にひろがる、うきは市

萱葺きと白壁、新鮮でクラシックな風景


 すっかり秋になった。あちこちに実りの風景がある。柿の里として知られる杷木。そのインターで降りて、筑後川を渡ってうきは市に。合併で吉井町を中心にして浮羽郡が一つの市となった。まず、合所ダムの奥の、注連原に行こう。
 この風景が好きで何度か来ている。姫治小学校を過ぎて左に折れると、棚田百選に選ばれた『つづら棚田』の風景が広がる。彼岸花が畦に咲くときはさぞや奇麗だろうな。道を戻って先に進むと、国指定の『平川家』が川の向こうに見える。萱葺き屋根を三つ並べた大規模な『くど造り』で、三百年近い古さだという。最近葺き替えられたのだが、まだ生活の場として現役の農家だ。障子を貼った潜り戸のような入口が、なんだかワビた茶室を思わせる。
 注連原の一番はずれにあるのが、手づくりハムの「イビザ」。スペイン好きの絵描きのオーナーが、窯も建物も手づくりしたもの。自然石を積んだレストランで、生ハムのアラカルトをランチに食べた。暖炉の火がチカチカ燃えて落ち着くなあ。
 少しもどって、音楽館『森の家』でコーヒーブレイクをした。ここはほんとに驚くよ。ただの喫茶店ではなく店全体がスピーカーなのだから。すなわちオーディオセットの中でコーヒーを飲む感じ。シンフォニーが心まで震わせて響きわたる……。  旧吉井町に戻る。いま映画「三丁目の夕日」が話題だけど、この町全体がそんな感じ。古い蔵の商家がうまく古美術商や雑貨屋になって、いまに生きてるノスタルジックな佇まいを見せている。小さな美術館があちこちにあって、散策するのが楽しい。今回の新発見は、『四月の魚』という名前の古道具さん。オーナーの針金細工だけでなく、「三丁目の夕日」の時代を思わせる懐かしい道具がぽちぽちと。なんとも心が落ち着く店なのである。
 町の中を巨瀬川の疎水が流れている。その水の風景も心和む。子どもたちが町角のあちこちに座って、画板に向かってスケッチしていた。先生に導かれた幼稚園児たちの行列も、どれもが絵になる吉井の町並みである。
 耳納連山の裾には果実畑が広がっているのだけど、その中にある古い民家を再生して、雑貨屋や喫茶店、和菓子屋など、新しい装いで可愛い雰囲気が出現している。和菓子『葡萄家』できんつばをお土産に買って、その上にある『cafeたねの隣り』であんみつを。まったくメタボになっちゃう誘惑だ。
 福岡からもドライブにはほどよい距離で、佐世保からも一時間半ぐらい。自然に溶け込んだうきは市は、これからもっと旅人を集めそうだなあ。


鏝絵は大分県の古い家によく見かけるけど、注連原にもあった。鶴亀とお目出度い。
つづら棚田は日本棚田百選に選ばれていて、秋の彼岸花の頃が一番にぎわう。
『イビザ』はスペインの島。そのハムを山の中で自家製造。天井には燻製ハムが下がってる。
音楽館「森の家」には直径2メートルのスピーカーが二つ。迷いのない音がコーヒーを美味しくする。
吉井町は商業で栄えた蔵の町。落ち着いた佇まいは決して過去の風景ではない。
古道具屋と雑貨屋の「四月の魚」。ユニークなのは名前だけではありません。
園児たちが先生に連れられて帰る日常風景が、なんとも吉井らしくてパチリ。
果実畑の上にある古い民家が改装されて、お洒落な店に生まれ変わって面白い。


掲載日:2007年12月08日