秋の九重の山裾に、温泉を探してドライブ
出来れば簡易共同浴場などがいいな

 夏の疲れはやっぱり心も身体もほぐしてくれる温泉だな。それも有名なところじゃなく、あちこち当てなく走って、まだ入ったことのない湯を探し……。
ファームロードの下に広がるのは、寺尾野の里。見事な曲線を描く昔のままの田んぼがアートだ。その風景の中に、寺尾野温泉薬師湯の建物を探せ!

秋の九重の山裾に、温泉を探してドライブ

出来れば簡易共同浴場などがいいな


 というわけで、大分自動車道を走り、玖珠インターで降りる。そこから国道387号線を上って行く。『壁湯』は前にも来て気に入ったところ。道の左側に一軒、旅館「福元屋」がある。川沿いの崖を掘った湯舟。奥の方にあるのは簡易共同湯で、料金箱があって自由に入れる。手前にあるのは福元屋のもので、壁湯だけなら200円で入れる。まさに川沿いの野趣味溢れるもの。湯舟の底は大きな自然岩だ。
 宝泉寺温泉の家並みを眺めながら更に進むと、『川底』がある。見るからに古そうな旅館『蛍川荘』で、何度か通るたびに立ち寄りたいと思っていたので今回は挑戦。入って驚いた。これぞ江戸時代の温泉という感じだ。丸い川石を敷き詰めた三つの湯舟がある。それぞれ温度が違って、奥に行くほど熱い。鄙びた風情がなんだか嬉しい。
 道は更に上り、県境を越えて熊本県に入る途中でファームロードを走り、山間を抜ける。『守護陣温泉』というサインを見つけて細い道を辿った。昨年出来たばかりの立ち寄り湯、15ある家族湯の棟が杉林の際に並んでいた。
 ファームロードを更に進んでいると、カーナビに『寺尾野温泉』と浮き出てきた。どこにも温泉らしき風景ないのにと訝りながらナビの通り進むと、小さな集落に突き当たった。ここが寺尾野らしいが、まったくの山里で温泉の風情はない。稲刈りを待つ棚田が黄金色に波つばかりだ。田んぼの奥に、どうもそれらしき一軒家を見つけて、半信半疑で近寄ってみると、『薬師湯』の看板が上がっていた。もちろん無人だ。恐る恐る覗くと、青いタイルで出来た湯舟がある。200円と料金表示も。これは地元の人たちの共同温泉で、旅人もどうぞ、ということらしい。
 旅の面白みは発見なのだが、まさにこれは秘境の湯を絵に描いたもの。道を戻ると、橋の下に絵のような山里の風景が広がり、そこにポツンと隠れるように『寺尾野温泉』があった。
 それから国道442に出て黒川温泉を通るのだが、今回はパス。瀬ノ本高原を過ぎてまっすぐと、久住山の南の山裾を走る。久住山の裾には白濁した『赤川温泉』もある。
 写真でよく見かける『レゾネイトクラブくじゅう』を、今回のドライブの終着にしようと車を進めると、まさに絵のような高原リゾート。ここの立ち寄り湯は500円。建物の背景には雲を被った勇壮な久住山があった。
 帰途について走っていると、『納池公園』という看板を見かけ、軽い気持ちで立ち寄ったのだが、これがまた発見の喜び。神社の古木が聳え、室町時代の様式という湧水の川が、清流をゆるやかに流していた。傾いた陽が、静かな時間を流れに浮かべていた。


壁湯は野趣味がある。繰りぬいた岩壁から温泉が湧いて、湯舟の外はすぐ川。入浴料200円。
川底温泉は『蛍川荘』一軒だけ。湯量たっぷりの江戸時代の温泉だ。入浴料500円。
辺鄙なところにある『守護陣温泉』は全部家族湯で利用料1500円。5人で入ると300円。
寺尾野温泉はまさに隠れ湯。硫黄の香りがプンとして、入浴料200円。
山並みをぬって走る国道442号線。まさにドライブ最適。
久住山の山裾にある「あざみ台展望台」からは阿蘇の山々が展望できる。
レゾネイトクラブくじゅうは久住山を背後にするリゾートホテル。ここの湯も500円で利用できる。
納池公園は室町末期、この地を納めた豪族が造った。スギ、タブ、カシの古木と湧水池が凄い。


掲載日:2007年11月09日