古代からの歴史、焼物、食と豊かな自然
さまざまな文化を奏でる城下町・唐津

 城下町というと鄙びたイメージがあるのだけど、唐津には海の青さと空の広がりがあって、さらに祭りや唐津焼といまに生きる伝統がある。福岡市にも近いから、もっと発展していいはずなんだけど……。
国指定重要文化財の旧高取家住宅。唐津城の近い海岸に面したところ石垣に沿った道を辿ると立派な屋敷がある。4月から一般公開(入館料500円)されている。石炭王といわれた高取氏が贅を尽くして建てたもので、能舞台まである。

古代からの歴史、焼物、食と豊かな自然

さまざまな文化を奏でる城下町・唐津


 唐津に行くことにしたのだけど、その前に相知に立ち寄った。アジサイの季節はもうすぐだし、暑くなると涼を感じさせる滝はきっとドライブスポットとなるだろうから。
 「見返りの滝」は日本の滝100選にも選ばれている。豊かな水が霧になって舞い上がる。アジサイの群生地だから、6月は賑わうだろうな。
 また相知には「鵜殿石仏群」があって、持国天、多聞天など仏法を守護する仏が岩に刻んである。
 たくさんの遺跡が唐津にはあり、その全貌を「古代の森会館」で学ぶことが出来る。「菜畑遺跡」は日本最古の水田跡が発見されたところ。そして古墳の中で一番大きいのが、全長108メートルの「久里双水」前方後円墳だ。
 佐用姫伝説で知られる「鏡山」からは虹ノ松原や、宝くじが当たると話題になった「宝当神社」の高島が見える。晴れた日にはまさに絶景だ。
 そしてお昼は少し贅沢に浜玉の「飴源」で川魚と摘草の料理を。万葉集にも詠われた玉島川で採れたモズクガニが美味い。少し苦い摘草の数々で春を味わった。
 それから向かったのは、国の重要文化財に指定され、今年4月から公開されている「旧高取邸」。炭鉱王だった高取伊好が唐津城本丸近くの海岸沿いに建てたもので、約2300坪の敷地に2棟の建物があっていて、和を基調としながら洋間まであって、大広間には能舞台まで設えているという豪華さだ。一般公開されているので、ぜひ行って欲しい。
 訪れたときは藤の花盛りだった。寺沢志摩守広高によって、名護屋城の解体資材を用いて作ったといわれる唐津城だが、いまの天守閣などは昭和41年に再建されたもの。それでも往時の姿を偲ぶことが出来る秀麗な城だ。内部は資料館になっていて、古唐津や鎧や刀が展示されている。
 やはり唐津焼を忘れてはいけないだろう。古唐津は戦国時代に波多氏の城があった岸岳の山裾で、朝鮮半島の影響を受けて焼かれていた。波多氏滅亡の後に陶工たちは離散したが、伊万里椎ノ峯で焼いていたものの一族が、唐津藩の保護を受けて、城下に移って来たのが唐津焼の始まり。唐人町の中里太郎衛門御茶 窯には、敷地内に昔の登り窯が残されている。展示場では作品を見ることも購買することも出来るよ。
 さて、今回の旅は見所たくさんのフルコースだったから、最後にデザートを食べたいな。アーケード街にあるざる豆腐で有名な川島豆腐店で、一寸変わったソフトクリームを。豆乳味が美味だったよ。


見返りの滝の近辺はアジサイの名所。滝の飛沫が清涼感を誘うお勧めのスポットだ。
砂岩の岩肌に何体もの磨崖仏が刻まれている。時代は定かでないが、空海の帰国の頃とする説も。
古墳なのに、もうこれは立派な丘だ。まだまだ海は遠いのに、昔はこの近くまで海だったそうな。
寺沢志摩守広高によって植林されたという虹の松原。鏡山の展望台から眺める。
江戸時代から続く川魚料理の「飴源」。ツガニ、アユ、ヤマメが唐津焼に盛られている。
唐津城から望むと、砂嘴の上に街が出来ているのがよく判る。その佇まいが実にいい。
「土盛りの上に緑の草が繁っているが、これはのぼり窯跡。そこに至るなまこ壁の道が味わい深い。
唐津のアーケードは寂れたけど駄菓子屋などあって面白い。豆腐ソフトクリームは200円。


掲載日:2007年06月11日