島原半島の南半分をぐるり回って、
キリシタンの歴史と春を追いかけた

南北に通じる道路の真ん中に水路が通っている。昔ながらに土の道の両側に、石垣をめぐらせた武家屋敷が並んでいる。茅葺の屋敷が三軒、無料で開放されて、当時の暮らしぶりをしのぶことが出来る。

島原半島の南半分をぐるり回って、

キリシタンの歴史と春を追いかけた


 島原半島を巡る島原鉄道が廃止になるという話を聞いて、トロッコ列車にでも乗りたいな、と思って出かけた。雲仙や島原に行っても、南の方にはなかなか行かないなあ。
 千々石町には立派な棚田を築いた地区がある。「棚田百選」にも選ばれていて、城壁のような見事さだ。そのスケールもすごく、俯瞰出来るように棚田展望所が設置されていた。
 小浜温泉に下りると、まさに湯の町の風情。あちこちに湯煙が上がり、大きなホテルや旅館が並んでいる。でも昨今のプライベート旅行にはなんだか向かない大味な感じ。ここから右折して雲仙に向かうのが普通だが、今回は半島を南下した。
 国道251号線は海岸に沿っている。走っていると、キリシタン墓碑の標識をあちこちに見かける。加津佐の須崎で一つの墓地に立ち寄った。これらは禁教令以前の墓で、花十字がくっきり彫られた見事なものだ。
 口之津で立ち寄ったのは「海の資料館」。三池炭鉱の輸出は口之津港で行われていた。ポルトガル貿易の船も着いた古くからの港だ。「からゆきさん」を乗せた”青煙突のバッタンフル“もここから出た。「歴史民族資料館」はきれいに整理されていて懐かしい気分になる。
 さて、今回の目的の一つだった「原城跡」に着く。ご存知、島原の乱で天草四郎と一揆衆が立てこもって果てた地である。悲惨な歴史をぬぐうかのように、桜が満開だった。最近の発掘で全貌が明らかになって来た。そして、もう一つ「日野江城跡」を訪ねる。発掘中に来たことがあったが、そのとき石段が南無阿弥陀仏と刻まれた墓石だったのに驚いた。キリシタン弾圧の前に仏教弾圧があった証拠。発掘では金箔が張られた黄金の瓦が出土している。
 西有家のキリシタン墓碑は仏教の墓地にあった。国指定の重要文化財で、世界遺産暫定登録のリストにノミネートされている。美しい蒲鉾型でローマ字が刻まれていた。
 それから「みずなし本陣」に行く。一帯は普賢岳噴火の被害が一番激しかったところ。いまも家が火山灰に埋まっていて保存展示されている。悲劇の場所が観光名所だというのも変な感じ。
 島原は湧水が多い。雲仙岳の伏流水が街のあちこちで湧いている。「浜の川湧水」はいまも生活に使われている。
 ようやく島原城に到着。お堀端の桜がきれいだ。武家屋敷をそぞろ歩いて、茶店で「かんざらし」を味わう。ゆったり落ち着いた風情である。
 そして最後は、やっぱり温泉だ。「島原温泉」はフェリーが発着する港にある。海を望む露天風呂は、スカッと旅の疲れを落としてくれた。


「棚田百選」に選ばれている千々石町の棚田。展望所からの眺めが素晴らしい。
口之津の「海の博物館」には赤い橋を渡って行く。石炭で栄えた頃が偲ばれる。入館料200円。
発掘され、石積みの補修が行われている「原城跡」。天草四郎の像は北村西望の作。
西有家町向浜に残る「キリシタン墓碑」は国指定史跡。ローマ字が刻まれている。
屋根まで埋まっている様は噴火の恐ろしさをまざまざと伝える。「みずなし本陣」にある。
島原城の天守閣は、キリシタン史料や藩政時代の資料が展示されている。入館料520円。
「浜の川湧水」はいまに生きる共同水場だ。野菜を洗って炊事の準備をする姿があった。
原温泉の露天風呂。海が望めていい気分。観光ホテル小湧園の入浴料は840円。


掲載日:2007年05月07日