矢部川に沿いの船小屋温泉から
星野村まで、山に向かって走ったら

 行政区分ではいくつかの町に跨っているけれど、それらをつなぐ団子の串のように国道442号線が走っている。川や山、古墳、歴史や温泉、古い家並み、さまざまな表情があって面白い道だ。
八女の町並みは味がある。市内福島には古い商家が並んで懐かしい。城下町久留米かた黒木を経て豊後へ続く豊後別路(往還道)に沿った商業地として栄えた。いまは国の「重要伝統的建築物群保存地区」にしていされている。

矢部川に沿いの船小屋温泉から
星野村まで、山に向かって走ったら

 九州新幹線の予定駅として「船小屋温泉」という地名を最近よく聞くけど、はて、そんな温泉どこにあるのかな。
 八女インターで降りて南西に向かった。矢部川の右岸に10軒ほどの旅館がある。温泉街の入り口に白い建物、「船小屋鉱泉場」。立て札に日本一の炭酸含有の温泉と書いてあったので飲んだら、「錆びた鉄の味、あ、確かに炭酸だあ〜」と思わず叫んでしまったよ。変な味だ。この川の温泉から、星野村の山の上にある温泉までドライブすることにした。
 八女市はたびたび来るけど、白壁の家や古い家並みが落ち着いて、情緒ある町だ。なかでも「堺屋」は見事な屋敷、酒造屋で財をなした往時の姿が見られ、庭園では水琴窟が透明な音を響かせて風流だ。古い町屋の一つ、食事処「ひるよけ」でお昼をいただいた。
 継体天皇の時代に北部九州を統治した「筑紫君磐井」の墓と言われる「岩戸山古墳」など、たくさんの古墳が八女地方には点在している。「岩戸山歴史博物館」には出土品や珍しい「石人石馬」があって、ここで歴史のお勉強。
 さあ、いまは八女市に合併された上陽町を通って山の方に。ここは石橋が多いところで、四連橋の「宮ヶ原橋」や、見事な「洗玉橋」などが国道沿いに見られる。
 名前がセンチメンタルな星野村。後醍醐天皇の皇子、懐良親王がこの地で亡くなったという伝承もあって、山深い里は実に興味深い。
 お茶と棚田が有名だけど江戸時代には主に茶壺を焼いた星野焼があった。その展示館には立派な茶壺が展示されている。趣のあるいい焼物だ。
 星の村という名から出来たのだろうけど、十篭の丘に「星の文化館」がある。コンピュータ制御された巨大な望遠鏡をのぞきながら太陽の話をしてくれるし、宿泊施設もあるので、星の観測も出来る。また、「茶の文化館」もあって、玉露茶をじっくり味わえる。なんとたくさんの切り口を持った村なのだろうか。さて、最後は「きらら」で温泉に。村の集落や耳納連山を見おろして、旅の疲れはどこえやら。少しぬめりがあるいいお湯だった。
 帰りは吉井に出て朝倉インターから高速道に乗ろうと山越えして行く。すると驚くほど高い石積みの棚田に出っくわした。まるで天まで続いているようだ。凄い。よく耕したな。昔の人は偉いなあ。


文政7年(1824)に発見されたという含鉄炭酸泉の船小屋温泉。矢部川右岸の筑後市にある。
堺屋(旧木下家住宅)は明治時代に酒造業を営んだ家。見事な離れや庭園が無料で公開。
防火のために漆喰で固めた「居蔵」造りで、天保9年という一番の古さだ。
見事な石積みの洗玉橋。合併する前は上陽町。肥後の通潤橋をかけた名工、橋本甚五郎が築いた。
「古陶星野焼展示館」には江戸時代に作られた焼物が展示されている。
合瀬耳納(おうぜみのう)高原へと向かう途中にある、標高差230m,425枚の棚田。
十篭の丘にある「星の文化館」では巨大望遠鏡が覗ける。
「星野温泉「きらら」。山々や森の緑を楽しみながら露天風呂はいかが。入浴料500円。


掲載日:2007年02月19日