“ふるさと”の音楽が流れて来そうな、
城下町秋月の晩夏。

山や川の自然が美しい秋月。城下町だった名残が色濃くある
その佇まいは少し寂しげに見えるけど、どこか懐かしさを感じさせた。
「何気ない小川の風景だ。野鳥川は秋月の城下を流れていた。時代は移り変わって行ったけど、この流れは昔から変わらないのだと考えた。

“ふるさと”の音楽が流れて来そうな、
城下町秋月の晩夏。


 秋月は甘木市だったのに今度訪ねたら朝倉市になっていた。甘木のイメージと秋月の古い城下町の落ち着いた雰囲気が一致しなかった。朝倉市となるとさらに混乱する。ロシアの人形マヨルカのように、朝倉の中に甘木があって、その中に秋月があるというわけ。
 甘木インターで高速を降りて、甘木市に向かう。市内を抜けて国道322  号線をひた走る。国道なのに一車線だけの川沿いの細い道になるのだが、やはり間違いではない。(直進で山越えする道はバイパス)
 うさぎ追いし彼の山 小鮒釣りし彼の川……、「ふるさと」のメロディーが流れて来そうな風景だ。自分の故郷ではないのにそんな気になるというのは、日本人のDNAに組み込まれたもののようだ。最近はコンクリートで固められた川が多いが、この野鳥川は名前のように自然のままで懐かしい感じ。古処山に源を発し秋月城下を流れている。
 町に入ってまず目に付くのが「目鏡橋」。江戸末期に長崎から石工を招いて築いたという綺麗な石橋だ。川底は舗道のように敷石になっていて、流れがいい音楽のように聞こえる。
 さて歴史探訪だが、戦国時代は秋月氏が支配し、寛永元年(1624)に黒田長政の三男長興五万石の城下となり、碁盤の目の待ち割りが行われた。山側に秋月城跡があり、そこは中学校になっている。堀や長屋門の石段が古を想像させる。
 武家屋敷が「秋月郷土館」になっているが、ここはぜひ行ったがいい。秋月藩や「秋月の乱」について勉強出来るほか、横山大観や東山魁夷、ルアールの絵などすごい絵が収蔵されている。
 紙漉きの現場を見ることが出来る。楮の枝を晒して、砕いて繊維を出して紙に漉く。昔ながらの丁寧な作業だ。いろいろな和紙が販売されているよ。
 さて、リンゴ狩りをやってみた。ブドウも梨もあるけれど、リンゴは初体験だ。島崎藤村の気分で真っ赤に熟れた実をもぎ取った。
 昼ごはんは秋月から少し古処山に向かったところにある手打ち蕎麦。辺りには山菜料理や山女魚を食べる店があった。
 帰るにはまだ早いので山間へドライブをすることに。それは『ゼロ戦、音楽館』という看板を見かけたからだ。戦闘機と音楽のアンバランスが気になった。訪ねるとそこは倉庫で、まさにゼロ戦が展示され、音響設備の歴史が分かる『音楽館』だった。
 思わぬ発見は、黒川小学校跡の『共星の里』だ。小学校の校舎がアートのギャラリーになっていて、喫茶レストランもNPOで運営されていた。驚くほど質の高い、面白いギャラリーで、創作力に圧倒された。偶然の出会いが旅の面白さだね。


目鏡橋は長崎の石工が築いたという。川底の石畳の上を清流が流れる。
秋月郷土館はかつての武家屋敷。歴史と美術が学べる。入場料、500円。
秋月城跡はいま中学校になっている。往時を忍ぶ長屋門の石段。
秋月手漉き和紙の工場ではいまも昔のままに丁寧に一枚一枚作られている。
リンゴ狩りなんてどうですか。ちなみに1kg700円。
南方で発見されたゼロ戦。太刀洗に資料館が出来るまでここに。入場料600円。
黒川小学校跡が素敵なギャラリーになっていた。楽しいよ。入館料、ドリンク付で500円。
古い木造の校舎が喫茶ギャラリーに。懐かしさを感じながら一休み。


掲載日:2006年09月25日