昔懐かしい杖立温泉から小国へ、
春盛りの心豊かなドライブ。

コイノボリが無数に泳ぐ杖立温泉の風景を見たいと思った。
緑と花がつい寄り道をさせる楽しいドライブで、
春の風景だけに加えて蕎麦と温泉がいいね。
大型観光が終わった後の古い温泉地はどこも苦労しているようだが、全国から寄せられた無数の鯉のぼりが泳いで、元気な気分になる。湯が豊富な杖立温泉は、温泉地の原型のようだ

昔懐かしい杖立温泉から小国へ、

春盛りの心豊かなドライブ。


 三千匹もの鯉が泳ぐという杖立温泉の『鯉のぼり祭り』を見ようと、日田ICで高速を降りて、国道212号を走ることに。途中、シャクナゲが咲くという看板が目に飛び込み、寄り道することにする。まあ、驚くほどの山道を進む。20分ほど走ると、前津江町に着いた。1万本のシャクナゲが山の斜面を染めていた。『川津シャクナゲ園』だ。
 もと来た道を戻り、また212号を進む。大分県が終わって熊本県に入るとすぐ、杖立温泉である。トンネルを潜る手前で旧道を行くと、広い川幅の両岸に木造三階建ての古い旅館が立ち並ぶ。やっと着いた感慨も持つ間もなく、たくさんの鯉のぼりに圧倒された。
「杖をついて着た病人も、帰りは杖を忘れて帰る」という謂れがあり、その歴史は千八百年にもなると言われる。泉質は弱食塩泉。温度は98〜100℃の高温で湯量は豊富。あちこちで湯煙が上がっている。古い旅館が多いから懐かしい気にさせる路地が巡っている。迷路遊びのようにそぞろ歩くと、薬師堂があったり、共同の御前湯(200円)に突き当ったたりする。杖立川岸には『元湯』がある。無料で入れるようだけど、お地蔵さんが見てるので、お賽銭をネ。
 ここまで来たついでだから蕎麦を食べたいとそば街道へ向った。旧道に入って小国の町を抜ける。バイパスより風情があっていいね。途中で車を停めたのは、『けやき水源』。欅の巨樹の根元から、こんこんと清水が湧いていた。
 探し当てたそば処「山川草木」は、まず駐車場で感激した。製材所から出たチップが敷き詰められ、緑の林の中に黄色い絨毯のようだった。
 満腹の後はやはり温泉に入りたいと思って地図を見ると、『奴留湯温泉』が近くにある。前にこのコーナーで二、三百円で入れる町湯の特集をしたとき来たのだが、ちょうど清掃中で入れなかったのだ。
 廃線になった宮原線の北里駅が、時間をテーマとしたオブジェのようにぽつんとある。北里柴三郎博士が生まれた里は、春の穏やかに包まれていた。  駐車場に停め、入り口の箱に二百円入れてドアを開けると、湯が溢れているのに驚いた。さらに驚くのは湯舟の底に石が敷きつめてあること。名前のようにぬるい。38℃だという。じっくり浸からないと。硫黄の匂いがして実にいい温泉だ。ぜひお勧め。
 さあ帰路につく。行きに見かけた『下城の大イチョウ』に寄る。樹齢千年に圧倒され、傍にあった『下城滝』も感動した。湯もよし、花も風景もよしの春のドライブだった。


前津江町の川津シャクナゲ園には1万本が花盛り。入園料500円。
杖立温泉の歴史は古い。湯量も多くあちこちに湯煙が。旅館の立寄り湯は500円。
路地を巡ると、子どもの心に帰った気になる。突き当たりにある御前湯は200円。
小国町の中にある「けやき水源」。こんこんと湧き出て、ご利益満点の神様も。
小国のそば街道にはたくさん蕎麦屋があるが、それを探して巡るのも楽しい。
奴留湯温泉は町湯だけ。200円で自由に入れるよ。とてもいい温泉だ。
下城の大イチョウ。樹齢千年といわれる。秋にまた訪れたいな。
下城滝のほかにもまだ滝があって、渓谷沿いに散策道やつり橋がある。


掲載日:2006年05月25日