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パパの赤ちゃん日記(9)

【ルンルンベビー】

おっと、すでにレジは長蛇の列だ。片腕にわが子を抱え、もう一方の手に紙オムツや粉ミルクをさげた母親たち。そっけない表情で並んでいる父親たちの姿も目立つ。


「ホラ、お父さん、もう一回オムツば取ってきて!」


紙オムツはお一人様一個限定商品なのか? 支払いを終えたある父親が奥さんから指令を受け、レジを通した商品を妻に手渡し、再び売り場の方へ走って行く。


凄い…。スーパーのベビー用品特売日を初めて体験した修次は、親たちのエネルギッシュな購買欲に圧倒されながら、慣れない足取りで、商品棚を物色していた。

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え〜と、フリフリ、モリモリ……あれ、ミルクの名前は何だっけ? あ、あった。これこれ『ルンルンベビー』だったな。


修次は玲子に頼まれたミルクの名前を確認する。何でも通常価格より七、八百円安いらしく、仕事の合間をぬって一役買うことになったのだ。


修次はルンルンベビー を二缶取ってレジへ並んだ。


それにしても平日なのに修次同様、ネクタイ姿の父親も多い。渋い面構えの中に「嫁さんに頼まれて仕方なく並んでいるんだぜ」とでも言いたそうな哀愁も帯びている。修次もそんな父親たちに同化して順番を待った。


ベビー用品はビールや煙草など修次の嗜好品と同じく、家計でのウェートが高くなってきた。でもビールも煙草もやめたくない。


同じ商品を少しでも安く手に入れるのは庶民の知恵であり、家庭の幸せを守る鍵だ。家族のために堂々と胸を張ってレジに並ぶぞ。と修次は自分に言い聞かせていた。(つづく)