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パパの赤ちゃん日記(14)

ぽんぽんもしもし

白衣の上にカーデガンを着こんだ看護師さんが現れた。

「夜遅くすみません」と修次と玲子は頭を下げた。

「こちらへどうぞ」

看護師さんの案内で、しーんと静まりかえった待合室から診察室に通された。


体温を測り終え、しばらくするとかっぷくのよい先生が白衣を羽織りながら診察室に入ってきた。

「どうもすみません」

夫婦揃ってまた頭を下げる。


顎にたくわえた髭と眼鏡の印象が歌手の上條恒彦を思わせる先生だ。
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「はい、ここに座って」

先生が補聴器を取り出しながら、丸椅子を差し出す。玲子が菜々子を抱いて座り、修次は二人の背後に佇んだ。


玲子が菜々子のシャツをめくる。嫌そうにむずかる菜々子の側に看護師さんが寄り添うようにして体を支えながら、「は〜い、ぽんぽんもしもししましょうね」と優しく声をかけてくれる。


「ぽんぽんもしもし」という言葉に修次の緊張もややほぐれた。


内診を終わった先生が説明を始めた。

「突発性発疹症ですね」

「トッパツセイ……?」

修次と玲子はほとんど同時に聞き慣れない病名を声にした。


不安がよぎる。

「いやいや、そう心配しないで。これくらいの時期に多い病気なんですよ」

九度近い熱が二、三日続き、熱がひく頃に赤い湿疹がでることがある赤ちゃん特有の病気らしい。

生まれて半年くらい経つと、母親からもらった免疫がなくなってきて、発熱や感染症をおこしやすくなるそうだ。

しかし、大人のように注射や座薬で強制的に熱を冷ますのは、あまり好ましくないらしい。


熱が出るのは身体がウイルスと一所懸命に戦っている証拠。抗生物質などを使って自然に治すのが理想的なのだ。


しかし、大人も九度近い高熱は大変に辛いもの。こんな小さな身体で大丈夫なのだろうか……やはり心配だ。

「風邪も流行っていますから油断は禁物です。薬を飲んで、安静にして、水分は十分に与えてやってください。ご主人、ご心配なく」

顎髭をなでながら頬笑む先生に、修次は背筋を張り、凜とした声で、
「どうもありがとうございました」と挨拶して、深々と頭を下げた。(つづく)