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パパの赤ちゃん日記(8)

【SOS】

もうすぐ生後4ヶ月。現在、菜々子の体重は6750グラム。身長62センチ。首も据わったし、表情もずいぶん豊かになってきた。


「今の赤ちゃん、何ヶ月くらいやろうか?」

修次と玲子はジャスコシティ大塔店(現イオン大塔ショッピングセンター)の売り場で新生児を抱いた若いカップルとすれ違った。親になるとよそ様の赤ちゃんにもすぐ目が向くようになる。


「あらぁ〜、よう肥えなさってかわいかぁ。何ヶ月にならすと?」

見知らぬ婦人が笑みを浮かべて語りかけてきた。

ふたりは笑顔を返し「ハイ、もうすぐ四ヶ月です」と口を揃えて応える。子どもを介してなにげないコミュニケーションも増えた。

「ほんに、よか顔しとらす。じゃ坊やまたネ〜」

婦人は菜々子に顔を近づけ破顔して、人混みへと消えた。

「ボウヤ!?」

一瞬、修次と玲子の表情がこわばった。

「やっぱい、赤っか服ば着せてくればよかったぁ〜」と玲子が悔しがる。


ベビー用品コーナーで衣類を見た後、食料品売り場で晩ご飯の食材を買った。

「じゃ、レジば済ませてくるけん、待っとって」

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修次は菜々子を抱きかかえたまま、レジの外に出た。長時間抱っこしていたせいか腕がしびれ、感覚がなくなってきた。ずっと5キロ入りにの米袋を抱えて歩いているようなもんだもんなーー玲子もたくましくなるはずだ……。


そんなことを考えていると、突然、菜々子がぐずりながら泣きだした。うわっ!! 体重を米袋に例えた罰か? ……ヨシヨシ、と声を出さずに呟きながら、体を揺すってやるが、泣き声は増すばかり。「ヨシヨシ」と声を出してあやしてみたが、一向に効果がない。


周囲の視線を気にしながら一所懸命、泣きやまそうと努力したが、泣きやむ気配はまったくなかった。

……お〜い! 玲子〜、玲子様はまだか〜。SOS!玲子! 早く〜うぅ。
修次は冷静さを装いながらもパニック寸前だ。

「はいはい、どうちた?」

おう、玲子だ、おい、もう少し慌てろ……。

「ワンワン泣かれて、遠くから見たら人さらいのごたっよ」と玲子がからかう。何でもいい早く助けて、タッチ、抱っこタッチだ。

毎日スキンシップしている玲子はいたって平静。


その姿は相棒が超ピンチでリングから必死で手を差しのばしているにも関わらず、コーナーで落ち着き払ってゆくっりと手を伸ばすだけのジャイアント馬場の救援のようにも見えた。

母は日々たくましくなるのダァー。 (つづく)