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「アーティスト」

ar.jpg子供の頃、親にチャップリンの「独裁者」や「キッド」のリバイバル上映を観に連れて行ってもらった記憶がある。モノクロフイルムの中で声を発せず、人々を笑わせるチャップリンの演技に子供ながら「すごい人がいるんだな…」と感心した。

その後、CGをはじめ、今日の3Dへと映画はどんどん進化した。私たち同様どういう時代を生きた人も、過ぎ去った歴史の中では人類の最先端に暮らしていた訳だ。主人公ジョージもまさしくその一人。しかし、トーキーという新たなイノベーションの波の中、時代に取り残されていく。

ジョージの焦りと葛藤は、現代人にも通じる課題だと思う。PCやスマホを仕事効率化や人生を楽しくする道具としていかに使いこなすか? そんなの関係ねぇ、俺は今まで通りオレ流で行くぜ! 最先端を追わないこともジョージと同じ自由な選択肢だ。

でもどの時代を生きた人々もきっと新しい物好きだったに違いない。映画の中でもトーキーブームでペピーの人気はうなぎ上り、たちまち時の人になってしまう。

果たして「老兵は去るべし」なのか? そうではない。物語に描かれたペピーのジョージへの想いこそこの映画のテーマ。ジョージが見る正夢の素晴らしい音響効果など斬新な手法は、映像・音・物語など複数の芸術要素が合体して誕生した総合芸術としての映画を踏襲し、発展させた3D作品に負けない21世紀の映画だと思った。

まさに温故知新。それを象徴するラストシーンのタップダンスも爽やか。映画の原点ここにあり! ミシェル監督すごい! と楽しい気分で映画館を後にした。