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「戸尾市場火災から3.11を思う」

海路でいろんな品々が運ばれたその昔。早岐茶市、朝市のように佐世保の「市」は海とつながって発展した。市民の台所としてこの街の食文化を育んできた戸尾市場も、その前身は湊町の海岸に集まっていた露天商だったという。

大正時代に京町や山県町、勝富町界わいが栄え始めたのを機に、露店がここに移動したのが市場の始まりらしい。tono.jpg
その後、商港が湊町から万津町に変わり、戸尾の利便性はさらに高まり、新鮮な海の幸、山の幸、生活雑貨などいろんな物が揃う市場として発展。東京のアメ横にも通じる風情を持つ昭和テイストあふれるスポットとして観光客にも人気が高い。

 その独特の雰囲気や人情、佐世保らしい歴史と地域性は、若い世代にもリスペクトされていて昨年、戸尾川をテーマに有志が集い「戸尾川活性化計画ほぼフェスさせぼ実行委員会」が発足。第1回目のイベントを戸尾川が流れ込む万津町で開催。今後川をさかのぼり戸尾市場でも同イベントを開きたいと意欲を燃やしていた。
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その市場が3月7日(水)の夜8時40分頃出火。消防による懸命な消火活動が行われたが、約10店舗が営業を行っていた一棟が全焼してしまった。

上から望むとまるで爆撃を受けたような惨状。生活の支えとかけがえのない想い出を一晩で無にしてしまった商店主の方々の心労を察してしまう。

市場のがれきを呆然と見つめながら、東日本大震災の焼け野原のようながれきの荒野を思い出す。街の一角だけでも、こんなに失われるものは多く、空虚感に包まれる。一瞬に命と想い出、産業、風土、歴史、文化まで飲み込んだあの未曾有の災害が人々に与えた絶望感がいかに計れ知れないものであったであろうか。
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今日は3月11日(日)。島瀬公園では地元ミュージシャンたちによる『がんばろう、ニッポン2012』というチャリティライブが開かれている。その横では市民有志が戸尾市場火災を見舞う募金を呼びかけている。夕方からはキャンドルを灯し、東日本大震災の犠牲者を追悼した後、原発問題などを語り合う集会も開かれる。

そして今、佐世保の街にも追悼のサイレンが高々と響く。2012・3・11 14:46 黙祷。