「今村昌平のDNAが4年制に!」
30年前、今村昌平監督が学院長を務めていた横浜放送映画学院で「映画づくりは米づくりだ!」のスローガンを掲げ実施されていた研修があった。福島県の農村に赴き生徒は各生産者の家庭に住み込んで農作業のお手伝いをするというプログラムだ。
今振り返るとちょっとかじった程度の農家体験だったが、世間を知らない18歳の若僧にも、ものづくりには苦労と、喜びが同居していることを察することができた貴重な体験だった。今村監督の講義は1、2度しか受けていないが、「とにかくもっと本を読みなさい」と何度も口にしていたのを思い出す。
理由は若き日に読んだ深沢七郎の小説『楢山節考』を読んで「やられた」と思ったからと語っていた。小説に負けない映画を撮るために、本を読みなさいという教えだったと記憶している。
憧れの映画の仕事に就くことなくUターンしてしまったが、今村監督のたった一言は何事にも当てはまる人生の助言となった。
横浜東口、スカイビルの一角に日本中から集まった映画青年たち。歳月が流れた今、横浜から日本映画学校へ改組されながら、現場主義の教えを受け継いだ人材が日本映画の制作現場で多数活躍していることは、米づくりに参加した一人としても、とても嬉しいことだ。
そしてこの春、日本映画大学が開校。受験システムと同じく人間のサイズも企画化傾向にある日本の大学制度の中、故今村昌平の人間くさいDNAを受け継ぐ規格外の映画人をどんどん排出して、さらに日本の映画芸術を面白くして欲しいものだ。祝!日本映画大学開校、期待してます。