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「佐世保弁物語」

ライフさせぼが発行した「佐世保弁辞典」に収録されている『佐一郎と佐保美の物語』を、つなげて読んでみよう。物語仕立てで佐世保弁の使用例が分かるぞ。
※印に方言の意味も紹介しておく。


【おい】
「おい!君」と見知らぬ人に声をかけられた佐一郎は「えっ!? おいのことですか?」と首をかしげた。※「俺」の意味。

【おーてみてん】
「よかけん一回、おーてみてんね。よかひとけんが…」「そうね」佐保美は叔母がすすめた縁談に「赤い糸」のような予感を覚えた。※「会ってみたごらん」の意味。

【かずゆっ】
添乗員の佐保美はバスに戻った乗客を数え終え、「あれ? 一人たりん。もう一回かずゆっけん」と運転手に伝え、再び人数を当たった。※「数える」の意味。

SSS.jpg【かずんでん】
ソムリエの佐一郎は、新種のフルーツワインをテイスティングするためグラスに鼻を近づけ、後輩に「よかにおいばい。かずんでん」とグラスを差し出した。※「嗅いでみて」の意味。

【かわん】
佐保美は何度試着しても決めきらない修子にあきれはて「ねぇ、買うと? 買わんと?」と苛立った。すると修子は「やっぱい買わん。もう一回アルバで見てみるけん」悪びれた様子もなく微笑んだ。※「買わない」の意味。

【きこゆっ】
添乗員の佐保美は、両手をメガフォン代わりにして「後ろの方は聞こえていますかぁ〜、次の金立パーキングエリアで休憩ですね」と告げた。しばらく間を置いて後部座席にいた老人が「ようきこゆっよ」と応えた。 

【きゃあないた】
佐保美はゴキブリを見て「キャ〜ァ!」と悲鳴を上げて泣いた。その日以来職場で「キャアナイタ」という、あだ名で呼ばれている。※「きゃあ」=「ひどく」、「ないた」=「疲れた」の意味。

【くろうならんうち】
佐保美は初めて佐一郎とデートした。弓張展望台から望む九十九島の夕日は、二人をつなぐ糸のように真っ赤に染まった。「食事に行こうか?」という誘いに「今日はくろうならんうちに帰らんばけん…」と佐保美は心と裏腹な言葉を返してしまった。※「暗くならないうちに」の意味。saseben.jpg

【げんきんなか】
昨夜初めてのデートで佐保美から食事を断れた佐一郎は、どこかしょんぼり見えたのだろうか、同僚の松永シェフから「どがんかしたとね。なんか、今日はげんきのなかね〜」と声をかけられてしまった。※「元気がない」の意味。

【こけ】
〜コッコ〜とニワトリの鳴き声で目覚めた。一体何時頃だろう? 枕元に置いていた目覚まし時計を探すが見当たらない。佐一郎は「…おかしかね、こけおいとったとに…」と呟いた。※「ここ」の意味。

【こみんか】
佐一郎は古民家を利用したワインバーを開き、独立することを決めた。物件を見ながら「思ったより、こみんかですね」と不動産屋に呟いた。※「小さい」の意味。「こまか」「こみか」とも言う。

【さがいよっ】
風邪をひいて仕事を休んだ佐保美の携帯に同僚の恵からメールが届いた。「具合はどうですか、熱は下がった?」「うん、ねとったらだいぶさがいよっ」と変換しづらい方言をひらがな打ちで返信。※「下がってる」の意味。

【しけ】
「しけね、今日は海のしけとっけん、船ば出せんよ」佐一郎と佐保美は瀬渡し船で釣りに出かける予定だったが悪天候のため「海きらら」に場所を移し、クラゲやイルカを見て楽しんだ。※「困った」の意味。

hana.jpg【すいとっ】
佐一郎と佐保美は、いしだけ動植物園で象のハナ子を見ていた。「この象、うちたちの子どもんときからずっとおるよね…」「おいはこまか時、こいの鼻ばさわったことのあっとばい」「へぇ〜」と微笑み合う二人。突然、佐一郎が真顔に戻り、「佐保美さん、大事な話のあっとばってん…」「えっ!?」と驚く佐保美は(…いきなりプロポーズ? まさかハナ子の前で「すいとっ」ってゆわすとやろか…?)と想像おふくらませるのだった。」※「好きだ」の意味。席が空いているときなども「すいとっ」と使う。ちなみに佐世保人に親しみの深い象のハナ子は今年40歳。来園38周年を迎えるんだって。

【せまか】
「思ったよりせまかやろ」佐一郎はワインバーに改装する古民家に佐保美を連れてきた。「こいぐらいが、ちょうどよかさぁ。レトロ感のあってよかぁ」と佐保美は屋内を見回しながら、「大事な話」って仕事を独立する事やったとか、と心の中で呟くのだった。

続きはまた、そのうちに。 

ライフさせぼ刊『佐世保弁辞典〜ライフさせぼ編』より。