« 「OS-61 小学生高学年篇」 | メイン | 【48億の妄想】 »

a004143

「李相日監督の最新作、期待度大」

2003年、村上龍の故郷ここ佐世保市で暑い真夏のロケを敢行。映画『69sixty nine』で、熱い熱い青春エネルギーをフイルムに焼きつけた李相日(リ・サンイル)監督の最新作が、いよいよ動き出した。

06年に発表した『フラガール』で、キネ旬ベストテン1位や日本アカデミー賞などを受賞し、その手腕を広く知られるようになった李監督。『69』は、『フラガール』の男版といった要素も濃く、世の中が認める傑作を生み出す助走的な作品だったと思う。
akunJPG.JPG
しかし、傑作『フラガール』を生み出したにも関わらず、李監督の新作を観ないまま、いつの間にか3年の月日が過ぎてしまった。

そんな年の瀬に、金明堂書店で長崎市出身の作家・吉田修一の文庫本『悪人』がいきなり目に飛び込んだ。帯に記された「映画化」という見慣れた文句と共に「出演:妻夫木聡 深津絵里 監督:李相日監督」という文字が突き刺さった。

早速、本を購入。物語にぐいぐい引き込まれて一気に読んだ。出会い系サイトでつながっていく心と心の隙間で交錯するさまざまな感情、想い、すれ違い。大量消費や技術革新など時代のスピードに合わせ、どこか画一化されていくような地方都市で空虚感を抱きながら暮らす人々。そんな、どこにでもある日常の影で悲惨な殺人事件が起きてしまう……。

現代人が抱える孤独や切ない想いを細やかに描出しながら、人間の本質とは何かを問う力強い小説だった。テレビドラマやアニメの劇場版全盛時代に、李監督は実にいい小説を題材に選んだな〜と嬉しくなった。「本当の善と悪が分からない今という時代」を、どんな映画に料理して楽しませてくれるか? 期待度大だ。 

『69』以来の妻夫木&李監督の顔合わせも注目。長崎、佐賀、福岡という身近な舞台設定も親しみやすいだけに来年秋の公開が待ち遠しい。

同じく吉田修一著『パレード』を行定勲監督が映画化。「今」を感じさせる吉田文学の相次ぐ映像化で、若き日本映画人たちの底力も見せて欲しいな。