「名優の笑顔」
ノーベル賞に湧いた先週、緒形拳さんの訃報が報じられた。昨年10月にこの「ざっき帳」にも記したように大好きな役者さんだった。「白野」佐世保公演で初めて生の舞台を拝見して、「男の心意気」を秘めたかっこよさを感じたと書いた。人生の最期まで役者を貫いた緒形さんに、やはり同じ心意気を感じた。
しかも、他界後に放送が始まったドラマ「風のガーデン」で、最期の演技まで見せてくれるという大きなプレゼント付というエンディングも緒形さんらしく思える。スクリーンや舞台ではなく、テレビを介して茶の間にいながら最新作を楽しめるのである。わたしが初めて緒形さんを知ったのは幼年期に見た「太閤記」の豊臣秀吉役。テレビで知った名優がテレビで幕を引く。偶然にせよ「白野」の主人公のような粋な生き様を感じてしまった。
作品を通してさまざまな刺激を与えてくれた緒形拳さん。ありがとうございました。ちょっと歯に噛んだような笑顔を忘れません。ご冥福をお祈りします。 (神無月)