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「九十九(くじゅうく)詩人」

  
 一昨日、アルカスSASEBOで羽田健太郎追悼チャリティコンサートを鑑賞した。「天国へ引っ越したハネケンにエールを送ろう!」というテーマで、生前に親交の深かったジャズピアニスト、前田憲男さん等がゲストで訪れスタンダードから、羽田作品、ミュージカルナンバーなどいろんな楽曲が奏でられた。
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 どうして、佐世保市で羽田さんの追悼コンサートが開かれたかと言うと、3年前に西海国立公園50周年記念して市民の生涯学習事業を展開している「させぼ夢大学」という団体が企画・製作した『九十九(くじゅうく)詩人』という歌曲を羽田さんが作曲したのが縁だ。

 全国的に行政などが著名音楽家にイメージソングなどを発注するのは、さほど珍しいことではない。が、この九十九詩人は偶然にも今年他界された羽田健太郎さんと阿久悠さんという日本の音楽シーンに数え切れない業績を残した二人のコラボ作品なのである。

 今年、春には羽田さんは佐世保市、西海パールシーリゾートに建立された記念歌碑の除幕式に元気な姿で列席されていた。

 その羽田さんが九十九島でボートやヨットを楽しみ海や島々にふれて曲をつけ、昭和歌謡を常にリードしてきた作詞家阿久悠さんに詩を頼んだ。CDとして音源も残り、市にとって贅沢な顔合わせで実現した新たな財産が誕生。そして大変貴重な遺作となった。

 さらに、この曲を歌ったのは羽田さんの長女であるソプラノ歌手、羽田紋子さんだ。3年前にアルカス大ホールのステージに立ち、父親が奏でるピアノに美しい歌声を乗せニュー九十九島ソングとして披露した。

 そして今回、真っ白なドレス姿の紋子さんが再び同じステージに登場。亡き父親が九州の西端に残した作品を前田さんのピアノ伴奏で歌い上げた。 

 改めて生で聴いてみて、九十九島というリアス式海岸の自然美を讃えただけでなく、内海の穏やかなイメージがよく表されている曲だと感じた。九十九島はカヤックなどマリンスポーツにも適していて、女性や子ども連れでも安全な岩場が多く、気軽に釣りを楽しめるスポットも人気が高い。
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 点々と広がる緑の島々が天然の防波堤的な役割も持っていて、1年中穏やかなのが特徴だ。荒々しい波が打ち寄せる外海と違い、どちらかと言えば母親のような包み込む優しさを持つ女性的な海……それが九十九島だ。

 紋子さんが歌う九十九詩人のメロディと歌詞には自然と人を調和させるような優しさに満ちていた。ステージトークで紋子さんは、今年、出産して母親になったことを告げた。母になったソプラノ歌手の豊かな歌声は九十九島の波や風のような心地よさをホールいっぱいに響かせ、観る者を安らかな海へと誘いだ。

 人のぬくもりや想い出、別れを九十九島の情景に綴った3番の歌詞は、自然を愛しむ心に普遍的な人間愛を描いてあるようにも思え、二人の故人が次世代へ託したメッセージのようにも聞こえた。

 そんなステージを見守るというより、一緒に参加しているかのような楽しそうな面影を残す遺影がステージ壁面に大きく映し出されていた。音楽で人々に幸せを届けてきた音楽家らしい素敵な笑顔(コンサート)だった。 (師走)