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「佐世保ラーメン伝2」

 いきなが、しょうもん、しょうくらべ、こうさんのセッ!!

40歳以上の佐世保出身者、特に男子には懐かしい響きを持つかけ声だと思う。佐世保独楽は今は伝統工芸品としての知られているが、かつては子どもたちの屋外玩具として大活躍したアイテムだ。バットやグローブと同じく、子どもがいる家庭の玄関に無造作に置いてあった人気者である。

 この佐世保独楽はラッキョウ型というボデイに剣を備えた投げゴマで、基本は回転時間を競う。「どのくらい回るか勝負しょうぜ!!」と言う、勝負開始の口上のようなもので、漢字で書くと「息長勝門勝競べ」だと言われている。

 ラスタカラーも思わせる独楽上部の赤、黄、緑、黒の鮮やかなデザインが印象的。ベイブレードはもとより、PSもDSもWiiもない時代、独楽の息を競うだけでなく、剣を相手のボディに投げつけ、傷をつけたり割ってしまうという「喧嘩独楽」というリアルでワイルドかつスリリングな闘いも佐世保独楽の醍醐味だったのである。ramen01JPG.JPG

 この歴史ある独楽のデザインがほどこされた器で食べるラーメンが、この秋登場した。その名はズバリ「佐世保ラーメン」。大阪屋の二代目、新郷社長が考え出した新たなる佐世保ラーメンだ。

 同店では、古くから職人たちがまかない料理として“ラーチャン”という物を食していたらしい。長崎と言えばチャンポンのメッカ。佐世保市のラーメン店では、当然といっていいほどメニューの中にチャンポンがラインナップされている。そこで、大阪屋の職人たちは、ラーメンの麺を使ったチャンポンを作ってその味を密かに楽しんでいたようだ。

 新郷社長は、佐世保は長崎と?岡の中間に位置する場所という大胆な発想で、両市の代表的食文化であるチャンポンとラーメンを融合を目指し、この新メニューの開発に取り組んだ。

 単なるまかない料理から、進化させるべく、試行錯誤を繰り返した。レシピはチャンポンと同じ。麺とスープはラーメンのものを使用。麺と野菜や肉とスープの絡み具合がポイントだったようだ。豚肉は西海市から取り寄せた無菌ポークが一番愛称がよかったということで採用になったと言う。ramen0013.JPG

 チャンポンと同じく野菜など具は盛りだくさん。仕上げに添えられた刻み唐辛子の色合いもよく見た目も食欲をそそる。スープはとんこつベースで「しょうゆ味」と「みそ味」の2種類が用意された。

「はい。お待たせしました」とテーブルに運ばれた佐世保ラーメンはどんぶりのフタをかぶっている。このフタこそ佐世保独楽の絵柄である。「もっと佐世保らしく」という社長のこだわりから、波佐見町の窯元に特注で焼いてもらった手作り陶器。フタを外すと美味しいそうな湯気が立ち上る。器を覗くと白い縁部分には西海国立公園九十九島(くじゅうくしま)の絵柄も描いてある、という佐世保づくしの一品なのである。※せっかくの独楽デザインのフタながら、食べる時は普通裏返されるので、運んでこられた瞬間しか愛でることができない。なんとも贅沢な器でもある。

 チャンポンか? ラーメンか? 九州の味を一度に楽しめる新商品は口コミなどでなかなか好評。個人的にはまず「しょうゆ味」から楽しんでみるのをおすすめしたい。

 

 このように昭和20年代に幕開けした佐世保のラーメン文化は今もまだ進化を続け、現代人の口に合う旨さを追い求めているのである。
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 昔、戸尾町の武駒ビルにあった(開発のため、いーぜるやマザーズなどとともに立ち退きになった)ファンキーなマスターで有名な人気ラーメン店「あごらーめん」もシューズセンター通りに先月から復活。平戸の名産「焼あご」をベースにした、あのヘルシーな味が再び夜の街で楽しめるようになった。


 お栄さん、お富さん、草木ヶ原、喜楽、有紀、丸徳、三河屋、末広、観音横町、まるに、黒髪、きたろう、笑ちゃん、味楽、ばってん、力麺……などなど中心街にもいろんな佐世保ラーメン店が点在している。寒い冬場に暖簾を潜り、お好みの佐世保ラーメンを探してみてはいかがか。〈了〉 (師走)