« 「佐世保ラーメン伝」 | メイン | 「佐世保ばやし」 »

a001746

「アジサカコウジの踊りに行くぜ!!」

 今年もアルカスSASEBOでコンテンポラリーダンスイベント「踊りにいくぜ!!」が開催された。今回のポスター、チラシを描いたのは、任天堂DSのゲームソフト『大人力検定』のイラストも手がけるなど幅広い活躍を見せている佐世保出身のイラストレーター、アジサカコウジ氏だった。
ajisakaj.JPG
 アジサカ氏は、パソコン出力画と絵筆によるアクリル画による人物画を数多く描き、国内外で個展を開いている。じっとこちらを見つめる無機質な表情やスタイリッシュな曲線美……自由な楽しみ方を秘めたポップでかつシュールなタッチで人気の高い作家だ。僕にとって彼の絵は一度見たら忘れられない「気になる絵」というのが、第一印象だった。

 例えばウルトラホーク、マジンガーZの造形美と同じく直感的の“かっこよさ”を構図の中に感じた。かつ西洋美と日本テイストの折衷的な香りもした。明るさを落としたアクリル世界には、個人的に小学校の時に夢中になったポプラ社発行のジュニア向け「江戸川乱歩シーリーズ」の表紙画に通じる昭和の郷愁も感じてしまった。

 作者の意図は定かでない、僕の勝手な印象だ。そんなアジサカ氏に一度「九十九島音楽祭」の中で僕がプロデューサーを担当した『MUSIC ISLAND99♪』のポスターを描いてもらったことがある。僕は「九十九島でアコースティックギターを弾いている女性を描いて欲しい」と発注した。その時、感じたことは、どこに貼っても浮き上がり過ぎず、しかも空間に埋没してしまわないオシャレな存在感だった。広報用のポスターなのに、ファッションの一つでもあるかのように街の中にスーッと溶け込んで行った。そこに時代を表現するポップセンスを感じた。

 そのアジサカ氏がアクリルでダンスの世界を描いたのが今回の作品だ。「気になる絵」に謎解きは不必要なのだろうけれども、長崎のアトリエにいる氏に久しぶりに電話をかけて、どんな思いで描いたのか聞いてみた。ajiakajp2.JPG

 氏もアート的な肉体表現であるコンテンポラリーダンスに好感を持っているようで、ダンサーが表現できないダンスを絵の世界に投影してみたかったと語ってくれた。誰もが想像する躍動感を抑えて、あえて静止している切り絵のような動作を描くことで、コンテンポラリーダンスの本質を表現しようと考えたそうだ。

 アジサカコウジ氏が絵筆で踊ったコンテンポラリーダンス『踊りに行くぜ!!』。個展では原画も展示されたそうだ。イラストのほか絵付きエッセイやシネマンガなどホームページでもクールでコケティッシュなアジサカコウジの世界が堪能できる。僕はシネマンガの『ガズパソロボ』『郷愁』が大好きだ。新作を楽しみにしているのだが、仕事が忙しそうでまだ拝見できない。

 余談だが、電話の雑談の中で美食家のアジサカ氏は福石観音入口の、さぬきうどん店「池田屋」を大絶賛。天神町にある隠れた名所居酒屋「たけや」にも一度行ってみたいと、興味をしめしていた。アーティストは「食」にもどん欲なのである。(霜月)