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「九十九島(くじゅうくしま)と音楽」

 軍港として栄えた佐世保市は、明治時代に佐世保海兵団軍楽隊楽長を務めていた田中穂積が作曲した日本最初のワルツと言われる「美しき天然」(作詞:武島羽衣)という名曲が生まれた場所だ。
 
♪ちゃ〜ら、ちゃちゃちゃ、ちゃ〜らら、ちゃらら〜らら〜ら〜、というスローワルツの覚えやすいメロディーは、サーカスのジンタやチンドン屋の演奏として親しまれ日本中に広がった。その後植民地下の朝鮮半島へ渡り人々と共に遠くロシア、中央アジアまで流れ、今も歌い継がれていたことが作家、姜(きょう)信子さんの研究などで明らかになっている歴史的な曲だ。
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 どこの町にもご当地ソングはあるものだが、佐世保の場合はこの『美しき天然』のように西海国立公園である九十九島(くじゅうくしま)を題材にした曲が、戦後もたくさん作られている。昭和35年には銘菓「九十九島せんぺい」のCMソングとして三橋美智也さんが歌った『九十九島』という曲が誕生している。地元の尾形よしやす氏が作曲した『西海ブルース』は昭和53年に内山田洋とクールファイブによる全国版としてヒットを放った。

 その他、團伊久磨さんが昭和44年に作曲した管弦楽と合唱のための『西海讃歌』も有名。西海国立公園制定50周年の一昨年は記念事業も多く開かれ、「させぼ夢大学」が九十九島の新しい歌を残そうと、羽田健太郎さんに作曲を、阿久悠さんに作詞を依頼。昭和の音楽界をリードした偉大な二人が共作で生み出した『九十九詩人(くじゅうくしじん)』という曲がお披露目され、CDとなって学校や公共施設、式典などを通じて多くの市民に配布された。惜しくもお二人とも今年他界されてしまい、佐世保市にとって大変貴重な遺作ともなった。
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 ちなみに私も同じ年、地元ミュージシャンに九十九島のある佐世保での暮らしを題材にした曲を作ってもらい『MUSIC ISLAND99♪』というライブイベントを企画、開催した。『小さな、船の旅』(Mayumi)、『僕らの唄』(赤崎コンパ大學)、『九十九島』(長野友美)、『風音』(サンディトリップ)の4つの歌が誕生。オムニバスCD『MUSIC ISLAND99♪』を製作して、ライブにきてくれた方々にプレゼントした。それぞれ、今もライブで大事に歌い続けてくれている。
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 インペリアルレコードからメジャーデビューして活動を行っている松千も九十九島でヨットに乗った時の心模様を歌った『虹色のいたずら』という作品を1stシングル『ショー』の中に収めている。

 そして、私自身はも記憶はないが、水前寺清子さんが九十九島を熱唱した『佐世保ばやし』という一曲があることを市政100周年年に佐世保市が発行した記念誌「佐世保辞典」で知った。そのオリジナルレコードがなんと「平和堂レコード」の倉庫に眠っていたのである。この秋の仮店舗移転のおりに約300枚の在庫が発見された。社長に話を聞くと、昭和50年代初頭に佐世保レコード商組合のメンバーが「佐世保の盆踊り曲を作ろう」と企画して、レコード会社に製作を委託。人気歌手の水前寺清子さんを起用したオリジナル曲が完成。島瀬公園で商店街が開催していた盆踊り大会のメイン曲として使用されていたそうだ。hayasi03.JPG 
 
 早速、私も入手したが、残念なことにプレーヤーがなくまだ再生していない。佐世保辞典の解説には、現在でも盆踊りやおくんちで欠かせない曲として親しまれている、と記されてるが、どんな曲なのか。現在は「おくんち」の規模も縮小されているので、今も欠かせない曲かどうかも定かでない。B面の『佐世保ん娘』の、ぶっ飛んだ歌詞も興味をそそる。チータこと昭和を代表する大物歌手が、どのようなパンチの効いた歌唱力で佐世保を歌い上げているのか気になる。
 
 クラブのDJに頼んでみようか? いやいやプレーヤーを持っている知人に再生してもらおう。当時のお値段は600円と記されている。なんともプレミアムな佐世保限定のお宝EP版なのである。   (霜月)