« 「佐世保のアジア映画祭」 | メイン | 「ライブ・映画・芝居」 »

a001538

「本当にあったトホホな話4」

第4話  〈こちら現場です〉

 
 九月二十八日の金曜日のことでございます。い〜ぜるで夕暮れ時から麦酒二本を飲んで、宴会の席に合流。がんがん酒をあおってお開き。二次会本体組と別れ、物書きのヤヨ様と「あと一軒参りましょうか!」と、南国食堂「地球屋」へ。するとうた唄いのMayumi嬢など顔見知りがおりまして、たいそう盛り上がり、ここでも麦酒ガンガン。

 続いて、ターボさんの音食亭へ。わたくし、また麦酒。ヤヨ様は噂のスープカレーチャンポンを初食、「あ〜ら美味しい。野菜いっぱいで菜食者の私にもぴったりですわ」とご満悦。とっくに午前零時を回っておりましたが、酔っぱらいの話は尽きず、「へぇ〜」「そうですかぁ」とヤヨ様も元気相づち打って付き合って下さいました。

 はて?わたくしはいったい何リットル程の麦酒を腹の中に注入したのでございましょう。ふだんは発泡酒、飲みに出ると本物の麦酒がぶがぶでございます。レギュラーガソリンを入れている車がいきなりハイオク満タン! と同様の状態だったのでしょうか、酔い冴えわたり、なかなか帰ろうという思考が働きませぬ。

 ターボさんの店を出て路地をしばらく歩き国道沿いに出てきた所で「おう、まだ開いている酒屋がありまするぞ!」と京町バス停近くの大型居酒屋店に入店。ヤヨ様ウーロン茶、わたくし麦酒でしめ。しばし雑談して「いや〜今宵は楽しゅうございました」とお別れすることに。ところが時間の感覚もなくした飲兵衛の記憶は、居酒屋を出てヤヨ様がタクシーに乗ったところで途絶えてしまったのです。

 目が覚めると、まず視界に飛び込んだのは高い天井。おぉぉ〜!? ここここここここここここここここここここここここここここここここここここここここここ、は?どこやぁ〜? 知り合いの家とかサウナとかで目を覚まし、一瞬戸惑うのとはまったく違うスケールの光景にここは部屋じゃないと直感。天井に見えたのはなんとアーケードの屋根であります。呆然として周囲を見回すと「もち吉」という看板が……。

 なんたる不覚。わたくしは京町バス停辺りの路上で寝入ってしまったのであります。慌ててポケットの携帯を取り出してみるとなんと午前五時過ぎ。!? 冷や汗というか、生温かい汗が全身に泡立つ不吉な気分に包まれます。


 あ〜、やってしまいました。これはキツネにばかされたか? 飲兵衛一生一大の不始末。わたくしは一体何時間寝てしまったのでありましょう? おっ、マイバッグがない。立ち上がりもう一度辺りをゆっくり見回すと、ありました。ありました。わたくしのバッグがあんな所に。数メートル離れたバス停ベンチに黒い鞄がぽつりと置き去りになっております。いやいや、急がねば、もう朝でございます。早う帰らねば。とバッグを手に取り、タクシーに乗ろうとバックの中に入れておりました財布を捜しますが、あ〜恐ろしや。何度探しても財布だけ見当たらないのでございます。
tohoho18.JPG
 とりあえずヤヨ様へ電話。留守電でございます。「…、起きたら、バス停で……財布がなくて…」あぁ〜何を意味不明の台詞を爽やかな夜明けにぼそぼそと呟いておるのでしょう。あわれなオヤジでございます。あ〜れぇ〜!? どうしましょう!! どうしましょう!! わたくしは何というお馬鹿さんでございましょう。独りベンチに腰掛け携帯電話をいじりながら、地団駄踏む思いで、己の心に「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿」と雄叫びを上げながら、リダイヤル履歴を見て愕然としてしまいました。
 
 ヤヨ様へ発信したつもりが、電話帳の一つ上に登録されていたまったく今宵の出来事に関係ないNさんの携帯へ発信してしまっていたのです。もし再生されたら、早朝に届いた薄気味悪い男の声にきっと気味悪い思いをされるでしょう。こうやって、わたくしは友人知人をなくしてしまう愚か者に成り下がるのでありましょう。何という間抜け。なんというボケナス野郎。

 気を取り戻し、ターボさんへ電話してみると。ツルルルルン!ツルルルルン!の呼び出し音のあと、「お〜い、なんしょっと?」と元気な声が返ってきました。「あぁ〜ターボさん起きとったと?」「うん、今から寝ようってしよった」事情を話すと少し笑いながら「君はおもしろ過ぎばい! 今からそっちに行くけん」と駆けつけてくれることになりました。〈つづく〉

※とある一人の飲兵衛が去る九月二十九日、土曜日未明にとんだ不始末を起こしてしまいました、こちらがその現場です。戸尾市場につながる国道沿に位置するこの場所は昼間は買い物客などで賑わいを見せますが、歓楽街から道路を隔てておりまして深夜になると人影もまばらになると言うことです。タクシーも停車しますが、沿道に花壇なども並んでいてドライバーからは死角になる、ちょうどこのベンチの当たりで飲兵衛は、昏睡状態になったものと思われます。以上現場からでした。      (神無月)