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「黒島豆腐」

DSC_0058.JPG うししししし。まだ、一度も食したことがなかった黒島豆腐をついにいただく機会が訪れた。ライターのヤヨ様が島に連絡して、夏場は実施されていない豆腐作り体験を「どうしてもやってみた〜い!」と話しをつけ、島のご婦人たちが引き受けてくれることになった。

 佐世保市黒島町は、マリナーズで大活躍中の城島健司選手の故郷である相浦町「城島記念館」に近い港からフェリーで渡る離島だ。 西海国立公園内の南九十九島に点在する208の島の中で最も大きな島で、明治35年に建造された黒島天主堂が全国的に有名だ。
 
 フランス人のマルマン神父の集大成ともいわれるレンガ造りの3層構造によるロマネスク様式は、その後の教会建築に大きな影響をあたえ、文化的価値が非常に高く、国の重要文化財に指定されている。この教会を見るために全国各地から観光に訪れる人が増えている。

 と言っても商魂たくましい観光地の賑わいはない。手つかずの自然とキリシタン文化の歴史を静かに刻むのどかな風景が一番の財産。相浦港から約12キロの海に浮かぶ西海のロマンを育む美しい島。その中央に天主堂はシンボリックに佇んでいる。

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 豆腐作りをレクチャーしてくださったご婦人によると、黒島豆腐は常食用ではなく、結婚式やお祝い事、お葬式など冠婚葬祭の際に欠かせない、ひとつのおもてなし料理だそうだ。

 にがりの代わりに海水を混ぜ固めるのが大きな特徴。豆乳やおから、寄席どうふをいただきながら、豆腐が固まるのを待つ。やがて低反発枕を思わせるできたての豆腐が湯気を上げ姿を表した。慎重に包丁を入れ12丁が完成した。噂には聞いていたが黒島豆腐は重くて固い。DSC_0012.JPG>

 ご婦人たちはこの豆腐をかまぼこサイズに切って皿に盛ってくれた。自家製のごま醤油をかけていただくのが正統らしい。まずは素で食べてみる。!? なるほど、微かに潮の香りがする。が、口の中には塩辛さではなく、どちらかといえば甘みに近い独特の風味がじんわり広がった。

 ほどよい食感。きざみネギとごま醤油でパクパクパクパク……まるで豆腐をお刺身で食べているような美味しさである。DSCF1443.JPG
 
 我々は、できたての黒島豆腐とおからを大事にたずさえ、フェリー「くろしま」に乗り込み帰路についた。自宅に持ち帰り、かまぼこサイズに薄く切ってみる。おう、ますます固くなってお皿の上にピンと立ちなさる。なんと凛々しいお姿。

 翌日まで拙者は晩酌のお供に豆腐三昧。次はポン酢にしてみましょうか?   滅多に口にできない逸品、黒島豆腐に舌鼓。う〜ん麦酒が一段と旨いぜ。            (文月)