« 「ウクレレを抱いた渡り鳥」 | メイン | 「アーケードで、あとしまつ!?」 »

a000715

「本当にあったトホホな話2」

第二話 〈真夜中のこんばんは〉
 
                      (1) 
 酒屋でたらふく飲んだ帰りのことでございます。数件はしごいたしまして、最後に残ったハウリンD氏と晴さん、わたくしの三人で談笑しながら湊町から島瀬公園あたりまで歩き「そいじゃまた!」と別れました。
 そこでタクシーを拾おうと考えたのですが、所持金が心もとなく「ワンメーター分ほど歩いて浮かすくわ〜っ」と、四ヶ町アーケードを抜け佐世保駅へ。「なかなか歩けるじゃないくわ〜っ」と酔い気分。自販機でブラック缶コーヒーを購入。「本気のブラック!」みたいなキャッチコピーを眺めながら「何?今までのは本気じゃなかったってくわ〜っ」と酔い強きで、七星特別仕様(1本15円)に火を灯し、ベンチに座って煙り、珈琲、煙り、珈琲で酔い覚まし。「この調子ならもうワンメータくらい歩けるぜ」と、深夜の夜道を♪歩こ〜う、歩こ〜う、わたしは元気〜。おっ!! こっちが、ちょいと近道か? と路地に入りタクシー料金浮かし作戦を続行していたまさにそのときでございます。
 
                      (2)
 背後から黒い車がスーッと近寄り停車。中から男が二人降りて来て「こんばんは〜」の声をかけながら、わたくしの方に近づいてきたのです。なんだ!?  こんな夜中に? ナンパか? 警戒しながら佇んでいると。「警察です。こんな夜中にどこに行きよらすとですか?」♪迷子の迷子の子猫ちゃん〜こ〜んな夜中にお巡りさん。「何かあったんですか?」とっさに口から出るのはめちゃベタな常とう句。「いや〜こんな時間にどこへ行かすとかな〜と思ってですね」「……飲んで家に帰るところです」「あ〜そうでしたか。家はこの辺ですか?」「いや○○町です」「そこまで歩くんですか?」「いやもうそろそろタクシーに乗ろうかと思ってました」「あ〜酔いを覚まして帰りよらすとですね」maki.jpg 違う。タクシー代を2〜3メーター浮かそうと思って歩いています…なんて言えません。言えません。いい大人がかっこ悪いじゃありませんか。と思いながらも覆面パトカーって家まで送ってくれるのかな? これまた横しまな思いが沸き上がる始末。


  (3)
「一応免許証か何か見せてもらえますか?」「はい」身元確認を受けながら、わたくしは気になっていたことを警察官に訊ねてみることを決意したのでございます。「あの〜僕って、そんなに怪しいですか?」「いやいや、こんな夜中ですからね。私たちも声をかけんばとですよ。この辺は盗難や窃盗がわりと多くて」これは社交辞令でしょうか?するともう一人の警察官が「いや、こんな夜中に下をうつむいてションボリして歩きよらしたけんですね」と補足コメント。
 ……うつむき。ションボリ。トホホのホ。うつむき。ションボリ。トホホのホ。己では♪歩こ〜う、歩こ〜う、などと陽気なストリートマンを気どっていたのに、端から見ると自殺でもしそうな? やっぱり怪しい深夜の徘徊者だったのでございます。トホホのホ。         (霜月)